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研究室の肖像
BinN卒業生による研究座談会です.
・2023年研究座談会 その1
・2020年研究座談会 その1
・2018年研究座談会 その1
・2017年研究座談会 その1
・2016年研究座談会 その1
・2012年研究座談会 その1 その2 その3 その4 その5
紹介
BinN Studies Unitについて
BinN Studies Unit (BinN:Behavior in Networks)は,2006年東京大学に羽藤が赴任したことを契機に14号館で発足した都市生活学研究室を母体とする研究グループです.現在は都市工学専攻,社会基盤学専攻,復興デザイン研究体の学生さんや様々な企業,国内外の大学研究者・エンジニア・建築家や都市計画家と連携しながら,都市生活学とネットワーク行動学に関する理論研究を中心に都市サービスの実装と国土・地域計画や都市空間計画と都市設計,モビリティデザインの実践に取り組んでいます.
私たちの研究グループでは明快な理論を下敷きにした現象理解と実装を重視しています.理論については,統計や線形代数を下敷きにした確率的な意思決定モデルや離散最適化問題を,ネットワーク解析については均衡配分やシミュレーションを,またミクロ経済学を下敷きにしたゲーム理論や確率過程などを合宿輪講等を通じて勉強しています.実装については,プログラミング言語を限定しませんが,PerlやSchemeよりもオブジェクト指向な言語の入門として適したJavaの修得を推奨しています.
矢鱈大げさに自分がやっていることを社会の中で重要だと言ってみたり,わかっていないのにわかったようなことはいうのはどうかと思います.乱暴な理解でなんでもいいからことを進めるよりも,都市と移動と生活や経済,地理の関係について,すこしづつでもいいので自分たちの手を動かしながら理解の範囲を丁寧に広げていけたらと思っています.
好奇心旺盛でまだ新しい研究グループです.本郷にお越しの際はお気軽に工学部1号館の3階の羽藤の居室にお立ち寄りください.研究の話をいろいろできたらとてもうれしく思います.
主な研究テーマ
ネットワークの階層構造がもたらす行動の確率的な諸相とその相互関係に強い関心を持っています.理論的手法論とデータ指向な手法論を使って研究に取り組んでいます.ネットワーク分析については,特に「経路選択モデル」が好きです.確率的な選択肢集合の認知メカニズムやその学習過程,進化学習理論を援用したプライシングやインセンティブのデザイン,n-GEVモデルとブラエスのパラドクスの関係性など,(一筋縄ではいきませんが)インプリケーションが豊富で計算アルゴリズムの実装にまだなお多くの課題が残るこうしたテーマに取り組んでいくことをとてもおもしろいと感じています.また物理的なネットワーク研究に加え,紐帯とよばれるソーシャルネットワークの生成過程についてKolmogorov方程式を使ったような理論的な研究も進めています.
行動分析では,歩行者とさまざまな種類の車両といったように複数の意思決定主体が互いに関連しあうような多体意思決定問題に関心があります.さらに時間軸上で繰り返される行動の確率的な変動を超長期的な枠組みでモデル表現したり,空間認知と行動継起のメカニズムの解明にも興味があります.
従来,こうした研究テーマは,観測が難しく計算負荷も高いことからモデルの仮定の範囲外だとされ,明確に取り扱われてきませんでした.われわれの研究室では,自ら観測技術を開発し現実的な計算アルゴリズムを実装することで,こうした問題の前段階からまず先に解決しようとしています.
特に観測面については,さまざまなウエアラブルセンサーを用いたプローブパーソン技術について独自の研究を進めています.GPS携帯電話とウエブダイアリーを用いたプローブパーソン技術については,松山都市圏や沖縄都市圏のPT調査に適用されるなど,実務的にも大きな広がりをみせつつあります.従来のアンケート調査にくらべると,観測分解能を格段に向上させ,スケールの細かな歩行や自転車などのトリップをより正確に観測できることが様々な研究成果から明らかになってきています.加速度や音,気圧などの複数のセンサーを筐体の中に組み込むことで,被験者がなんの作業もなしに超長期にわたって行動を観測することが可能なBCALSの開発も試みています.すこし大げさかもしれませんが,こうした技術開発により,ネットワーク上の行動分析の新たなパラダイムを模索しています.
応用研究
演繹的なシミュレーションと帰納的なデータ化技術の双方について一見するとかなり細かい研究を行っているように見えるかもしれません.私たちの研究室では,これらの技術を多量高精度な理論-技術体系として再構築することを目指しています.(そのために)その上で,具体的なフィールドを設定し,都市計画や交通計画における実際の問題に取り組み,モビリティをデザインすることで,そこで起こっている問題を解決することも指向しています.
実際に手を動かして図面をひき,模型をつくって空間設計を行うこと,その場所に適した空間情報サービスを実装してみること,多面的なシミュレーション計算を行いその町にあったモビリティプランを作成すること,その計画やデザインをもってユーザーと向き合うことを重視しています.
Spatial-Behevioral Graph APIと検索エンジンの実装や,見える化を基本にしたポータブル交通管制システムの実装,交通環境ポイントのインセンティブ設計や電気自動車やマイクロモビリティを使ったエリアマネジメント,実際の都市におけるミクロ-メゾ-マクロなスケールのスーパーシミュレーションの実装に取り組んでいます.