Master Course Interviews in 2024

研究を知る
小川大智

▲演習風景
羽藤 学部時代の関心を教えてもらえますか。

小川 B3は基礎プロ1のグループワークで交通量配分の計算が面白かった。ケースを変えたプラン
に対して数値的根拠を与えることができた。その後の応用プロジェクト1でミクロシミュレーション
のコードに触ることができて(研究室のOBで)愛媛大の三谷先生と共同でバスと信号制御の機能を
追加した。松山が対象敷地だったので僕たちの提案では松山駅近傍の信号を最適化し動画出力してプ
レゼンテーション出来た。B4になると、基礎プロのTAに誘われてグループワークに入ったり、
Hongoの開発をやってたんですが、なんていうのかな、継続して追従モデルのデバックをやって、
それでHongoに慣れ親しんだ気がします。B4の研究室は橋梁研で機械学習をやりました。部材損傷
の検知だったんですが、毛色は違うけれど逆問題で、数値計算やシミュレーションで順問題にはなれ
ていたけれど、より概念的に逆問題っていうのがおもしろそうだなと思えて、学部時代の研究で両方
向興味をもってやれたがB4だったと思います。

羽藤 交通の逆問題には、OD推定や交通ネットワークデザインが逆問題で生成系モデルの進展もあ
って研究として伸びていますね。

小川 B3のときに、土木というかハードの方の知識があった方がいいだろうと思っていて、橋梁を
志望したんですが、修士は一通りハードはできるところはできたと思えたので、人というか社会的
な観点をやりたいと思った、あとは(都市と交通という)分野にも関心があったので交通分野に出
願したということです。

羽藤 修士研究はどうでしたか。

小川 修士は、最初、Hongoのシミュレーションをやっていたのと学部で機械学習やっていたこと
からサロゲートでHongoを高速化するというテーマを考えました。結構おもしろかったんですが、
自分の中では交通工学的な車の挙動をサロゲートするっていうことに主眼をおいて研究を進めてき
たんですが、車両パターンを離散コサイン変換で縮約して、研究論文として土木計画学とWCTRで
発表することが出来ました。

羽藤 そこまでがM1ですよね。M2は何してたっけ?

小川 その後、先生との議論で経路選択が都市の問題では本質的なんじゃないかとなり、そこに絞
って研究に取り組みました。経路選択はマルチスケールな問題ですからリンク縮約とか離散コサイ
ン変換と同じようにいろんなスケールで縮約問題があります。羽藤さんに敵対的逆強化学習のジャ
ーナル論文を送ってもらって、従前の逐次モデルのアウターループ処理を高速推定させるアイデア
を発展させて都市計画学会からIEEEへ立て続けに投稿・発表しました。相互作用の内生性や、ゲ
ーム論的な新しい理論化や分析を加えつつ修論までやっていった感じです。メッシュベースのマル
チスケールの経路選択モデルをやったらいいんじゃないかと思いついて研究室を訪問していた
Bansalとの共同研究になって、マルチスケールなモデルをモデル側と画像を使った両方からやっ
たらいいのがあって、現在やっていることで、今後も進めていこうと思っています。

羽藤 研究の難しさみたいなことってどう思いますか?

小川 国際学会で何本も発表するようになっても、最初は自分でもどこに向かっているのかわから
なかった。でもやっぱり目的はそれぞれの研究にちゃんとあって、離散コサインはサロゲートで機
械学習のモデルにどうやって交通流の状態をいれればいいかというのがあったし、相互作用問題は、
駅などの歩行者同士の相互作用が多い場所の空間設計に対してGANで現実的な設計図面をつくり
たいという目的意識があったんですよね。でも実際に実装しようとすると一筋縄ではいかなくて、
うまくいかないところをどう解決するかを考えていくうちに自分では思いもよらないところに研究
が進んでいって、今いっていたように、書いたような論文の形になっていった。

 
▲冬の中間研究合宿@弘前

羽藤 計画通りに進むのもいいけど、イマーシブに巻き込まれるのも案外いいよね。笑。

小川 問題を考えるとき、どんなレベルで考えるか、手法としてのやり方がある、というのはまず
論文を読んで考えることだけれど、それを他の問題に適用する際、抽象化してやんないといけない
から、本当にどういう方法なのかということを改めて考えさせられる。課題に取り組む中で、それ
をどう解けるかたちに書き直していくを考えるときに、それが結構たいへんだし、僕はおもしろい。

羽藤 被災地のネットワーク形成でハブが勝手に生成されていたことからボースアイシュタイン凝
縮で立式出来ることに気づいて情報伝達の非線形性が再現できた。理論は知ってはいたけれど、災
害のリスクをエネルギー準位を置き換えることで、実際に自分の現場の現象に抽象度の高いレベル
で数式が脳の中でつながって同化していくのは愉しかった。

小川 授業をとるとき、なんとなくつながりそう、だけどつながらない。上位概念を狙ってとると
いうことをしていて、学際計算科学、量子力学、統計力学、解析学をとって網羅的に考え方を教わ
る、そいうところで、量子は多体なんですが、スケールを変えて、計算してセルの大きさを変えて
平均的な場の指標として扱う。追従理論とすぐ直接つながるわけじゃないけど、そこではアルゴリ
ズムの勉強や定式化も習う。すぐに式変形して、近い方法が使えないかと考えたりしました。

羽藤 次世代AIセンターで兼任してるけど東大の講義って情報系も人文系も含めてめちゃ面白い
よね、笑。

小川 情報理工の深層学習をとっていてモデルを網羅的に勉強した。理論的な側面が大事だから学
習理論についての証明だったり、そいうところが自分の研究の中の敵対的逆強化学習の安定性や効
率性の問題と共通している。スケールをかえて複数の条件を使って計算したり、アーキテクチャと
してそれが実装できるのかを考える上では、そういう講義をとったことが役に立った。

羽藤 一方で研究室の理論談話会は米国の大学院のやり方なんだけど、とにかく論文を読んで基礎
を身につけて(研究で)実践して習熟させる。修士だとアレだけど博士課程までやると10,000時
間くらいにはなるから、行動モデルや交通ORのドメインで一通りの理論と実装のバリエーション
が肌感覚で身についてプロといえるように育つと思う。でも高度な専門性を身につけるにはドメイ
ンでそこにしかない知識として発展させないと難しい。

小川 修論で最後の方はマルコフゲームだとなって、ゲームの考え方は自分の中では馴染みがなか
った。理論談話会でゲームのポテンシャルゲームがあるのを知って、限界ゲームなどもそうですが、
そいう交通分野の問題として勉強する中で、筋のいい理論や適している考え方を知って機械学習を
交通のドメインの考え方を合わせることで問題解決につながっていったと思います。

羽藤 研究室で学んだことはなんだろ、国際学会でも多く発表しましたが。

小川 研究室は、みんなぜんぜん違うことをやっている。それぞれ本当に直交しているので、なん
ていうかな、、研究室としては特殊だと思う一方で笑、人数分だけ独自の手法論があるっていう状
況はよかった。また分野全体の関心の分布がどうなっているのかは実際には国際学会に行かないと
わかんない。たとえば海外だと、自動運転は必ず出てくる。学会ブースに計測車があったり、手法
としても機械学習が一般的に使われている。現在の流れがどうなっているかということを知る機会
としては勉強になった。

羽藤 博士も増えてきて研究やるぞっていう感じになってるのはいいよね。

小川 研究室でそれぞれ異なる関心をもっているのは、本当にこの分野のことならこの人に話を聞
こうというのがメンバー同士お互いに信頼を寄せていました。そいう人たちがまわりにいることで、
一緒に議論することで問題は違っても共通点があるんじゃないかという気づきがあったりして、そ
れがモデルの定式化とか、こういう見方もできるんじゃないかという研究の糸口になっていた気が
します。

羽藤 笑、みんなで空間情報のプログラミングのコンペやって宇宙飛行士の毛利さんから賞金もら
ったりとか笑。

小川 あの時は、Hongoのシミュレーションはコードをかなり書かないといけない。システムと
しては大変なんだけど、ビジネスではUIが大切になる。出力を見せるのはひとまずWebだから
JavaScriptということになって慣れてないこともあってインターフェイス側がまだできていない
感じがするんだけど、みんなで触って見せて、またコードを組んで、開発している人が使えるだ
けじゃないくて、それをコミュニティの中で触れてもらって議論したし、鎌倉の合宿も楽しかっ
た笑。

羽藤 研究論文ちゃんと書いて理論をベースにじぶんたちのシステムつくるのは面白いよね。
IEEEは情報系の中の交通の捉え方を知るにはちょうどいいし、HKSTSもLamさんたちがやって
て中国の動向がよくわかるよね。WCTRは政策など幅広くという感じだけど、発表してどうでし
たか?

小川 WCTRは政策で上位問題を扱っている印象で、IEEEは手法面や自動走行の計測による車間
のセンサーをつかった研究者の集まりですよね、HKSTSは機械学習の話題が多かった。自分の関
心に近いこともありますが、都市計画学会と土木計画は、計画ですから当たり前なんですが上位
問題的なところを取り扱っています。都市計画は歴史や景観もあってエクスカーションに参加した
んですが盛岡の歴史的な場所を見て回るということで、都市計画っていう名前がまさにあてはまる
ような学会で面白かった。土木計画は土木なんで道路の人とか行政の人もいる。自分のやっている
内容からすると、直接というわけではないですが、それぞれ毛色が違う論文の内容を学会ごとに出
しみて、AIRLは国際だと一般的なんですが国内だとハジのセッションだから笑、そのあたりの認
識のされ方の違いは気になりました。貢献度は共通していてもフィードバックは違うから、いろい
ろ出してみておもしろかったです。

 
▲国際学会の主催のエクスカーションの練習で沖縄で川上りに参加。

羽藤 自分のドメインを定めることが大切だと思う。自分の専門があっての学際だから、闇雲に
プロジェクトに参加しても仕方ないし、かといって第一講座みたいな未分化だった頃の領域が学
問と言われてるのは居心地はいいけど、日本って東京も地方都市も困ってるから、こいう時代の
中では一回は日本の外に出て自分の手で解けていない問題と向き合ってちゃんとした臨床医とし
て専門分野を屹立させていく気持ちがあった方がいい。

小川 博士は決めたのはM1後半くらいですかね。研究自体が楽しかったですし、現実的にイン
ターンに行く気になれなくて、修士から研究室にきたのもあるし、そのまま継続して研究できた
らいいなと思ったのが博士進学の理由です。修士の積み残しがありますし、博士三年あるので、
もっと理論的にゲームだけじゃなくて制御みたいな問題を勉強しながら、実装で何ができるかと
いう部分でも、生成モデルっていうのがあるので、最終的には本当に図面が自動でつくれる、そ
いうものがStableDifuusionだけじゃなくて理論的な基礎づけをもって交通の現象を理論に基
づいた上で、生成・設計とかを動的な制御という形で出力してつくれたらいい。それをジャーナ
ル化して出して、フィードバックを受けて、今想像できているものではない、いろいろな、想像
できないようなことが創造できる三年間にしたいと思っている。

羽藤 最後にひとこと。

小川 この2年自分は変わったと思う。論文を書いたりして、プレゼンをして考え方が変わっ
て、そいう技術が向上して、それに加えて、ぜんぜん想像していなかったような新しいテーマ
であったり、いろいろ研究室のメンバーと議論する中で、自分の中で考え方を持っていなかっ
たような新しい概念が芽生えてきたような気がする。そいう視野がひらけていくような素晴ら
しい体験をさせていただいたことに感謝しています。それから3年、いつも能動的にできるわ
けじゃないけど、継続して視野を広げていけるよう努力していきたいと思っています。
ありがとうございました。