東京大学 羽藤研究グループ > 講座 > 2019 > 行動モデル夏の学校2019 > 当日のまとめ

第18回行動モデル夏の学校2019は、東京都文京区の東京大学本郷キャンパスにて、2019年9月21~23日の3日間、講師13名、参加者94名(うち聴講者7名)によって行われました。

このセミナーでは、ネットワーク上の選択理論の基礎となる行動モデルとフローモデルの講義を下敷きに、スマートフォンによるプローブパーソンデータを用いたプログラミングスタディにチームで取り組みます。都市計画や交通計画、土木計画における立地選択、目的地選択、経路選択、交通手段選択などの様々な需要予測の中での位置づけと事例紹介を行ったうえで、道路空間の再配分や観光、中心市街地再生、マーケティングなどへの応用と、プローブパーソン調査などの新たな行動調査とデータプラットフォーム手法についての最新事例を学びました。以下にその内容をまとめます。

During this summer (Sep. 2019), we organized a special seminar. This series of 2-3 days lectures and exercises will be an insight in Model Estimation. This annual event has been held since 2002 and this is the 18th time. Outstanding researchers showed us the case studies on demand estimations of location choice, route choice, and transportation mode choice used in the fields of: Civil planning, Urban planning, and Transportation planning. We learned the brand new methods of individual behavior survey like Probe Person, and thought about how to apply it practically in real world such as: Redistribution of Road Usage, Tourism Planning, Renewal of City Central Area, and Marketing optimization.


基調講演 Keynote lectures / 講義 Lectures / 研究奨励賞受賞者講演 Invited lecture / 演習 Group work / 表彰 Award


基調講演 Keynote Lectures


桑原雅夫(東北大学)
Dynamics in Transportation Networks

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原田昇(東京大学)
私と行動モデル

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講義 Lectures


Arnab Jana (IIT Mumbai)
Transportation Behavioral Modelling: An Introduction

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Giancarlos Troncoso Parady (UTokyo)
Basic Inference and Validation in Discrete Choice Modeling

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柳沼秀樹(東京理科大学)
Advanced Estimation Methods and Machine Learning

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力石 真(広島大)
Application of AI for Travel Behavior Modelling in Urban Networks

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倉内慎也(愛媛大)
行動モデルの基礎理論

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佐々木邦明(早稲田大)
行動モデルの推定

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円山琢也(熊本大)
有界性のある確率均衡モデル

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福田大輔(東京工業大学)
行動モデルと双対概念

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美添一樹(理研)
探索と推定:並列モンテカルロ木探索

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山本俊行(名古屋大学)
歩行者回遊行動モデリングのための最大エントロピー逆強化学習とEMアルゴリズム

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研究奨励賞受賞者講演 Invited Lecture


河瀬理貴(神⼾大)
Optimal Control Strategy for Relief Supply Behavior after a Major Disaster

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演習 Group work


課題:プローブパーソンデータを用いた行動モデル推定
プローブパーソンデータ(ロケーションデータ、ウェブダイアリー)・土地利用データ・交通ネットワークデータを用いて、離散選択モデルをはじめとした行動モデルの構築と推定を、3~10人での班ごとに行い、成果を発表しました。




01. 愛媛大   pdf / code

今年は横浜市のプローブパーソンデータを用いて自転車利用に注目した行動モデル分析を行った。概ね傾斜度が大きい地区では自転車の利用が減少する事が明らかとなった。そこで政策として電動アシスト自転車を支給する政策を行った。結果として自転車利用が増え、費用便益比が大きく正の値をとった。モデル推定から政策シミュレーションまで行う事ができたが、時間短縮費用の算出の仕方をチームで共有する事ができておらず、満足できる結果では無かった。しかし、他大学の学生の発表を講聴したり交流することにより、刺激をもらうことができるいい機会だった。



02. 熊本大学   pdf / code

発表概要: シェアサイクルに着目した交通手段選択モデル

感想: 私たちのチームは2020年東京オリンピック時の公共交通の混雑や道路混雑等への対策案を検討しました。具体的には、シェアサイクルに着目した移動手段選択モデルを構築し、シェアサイクルの利用促進を図る提案を考えました。シミュレーションの結果はあまり良い結果は得られませんでしたが、2日間先生方から様々な提案を頂き、とても勉強になりました。この経験を今後の学習に活かしていきたいと思っています。



03. 個人参加A   pdf / code

発表概要: 豊洲と都心の通勤通学需要に着目した交通手段選択モデルの作成を行いました。豊洲データを確認したところ、鉄道や地下鉄の利用が非常に多いことが分かったので、豊洲駅の半径2km圏内から都心7駅(東京駅など)の半径1km圏内へ移動したトリップを対象としました。

感想: 今回から配布された豊洲データに着目し、分析を行いました。多項ロジットモデルの説明変数に導入するための指標を作成しましたが、モデルについての理解が浅かったため、モデルが上手く回らなかったことが非常に悔しく思いました。今回の行動モデル夏の学校で学んだことを基に、さらに精進をしていきたいです。また機会があれば是非参加したいです。ありがとうございました。



04. 個人参加B   pdf / code

発表概要: Coming soon...

感想: Coming soon...



05. IIT Mumbai   pdf / code

Abstract: Traditional technique and Machine Learning techniques are employed to develop mode detection models. Validation of these models were performed by splitting the data into Training and Testing set. Test set was used to perform evaluation metrics. The evaluation is performed with the help of F1-score, Overall Accuracy, and Kappa value. The XGB and ANN techniques provided best overall and per-class performance in large dataset (PT data), while the XGB and RF techniques accounted for best performance in smaller dataset (PP data). Thereafter, the change in mode pattern and related carbon emission were predicted for future under different scenarios considering the age pattern transition. Few policy suggestions were also provided for the ease of transport of elderly people and to reduce carbon emissions.

Impression and thoughts: We had a great experience at the summer school. The initial lectures gave some great insights into the validation and its importance in transportation modelling while other lectures introduced us to new methods and their implementations. The methods and models used by different teams were really innovative and made us look at the same problem from several new perspectives. It was intellectually stimulating to be a part of this competition, and we look forward to attend the summer school organised by Behaviour in networks studies unit at University of Tokyo in the future years.



06. 東京理科大A   pdf / code

Abstract: Analyze of the refuge route choice of pedestrians during disaster in Toyosu area. Using the normal date of Toyosu area replace the moving date during the disaster and carry out parameter setting, the ultimate goal is to analyze the script. Construct the model of path selection and destination selection model that considers path selection. The research is based on MNL model, likelihood function is used to analyze route choice and destination choice. Then got the estimated result of route choice and destination choice.

Summary: We learned a lot of knowledge in this Summer School. Although we didn’t get the results we wanted, but we got valuable advice from teachers. And the experience of teamwork is also very valuable, whether in study or life, even in the later work, cooperation spirit is indispensable. We also attended many lectures given by professors from other schools, such opportunities are rare in normal times. So we are grateful so much to Summer school has provided an amazing opportunity for learning advanced statistical modeling to solve traffic problems. Here , through learning, teachers to teach well-days, let us in such a great learning environment ,in which learning a lot, and can know a lot of new friends. If we have the chance next time , we will also definitely attend.



07. 東京理科大B   pdf / code

発表概要: 横浜・豊洲の二時点間に着目した行動変化に関する分析

感想: 私たちは、近年話題の「時差ビズ」等による働き方の時間的変化を、2008年横浜PPと2018年豊洲PPという2時点のデータを比較することでの把握を試みました。基礎分析において見られた自宅出発時間に関する傾向を、簡単な回帰モデルでの実証を試みました。推定したモデル自体は適合度が低く、改善の余地はありましたが、結果からはいくつかの傾向を読み取ることができました。また、生データの処理・分析作業の経験、講義や他大の発表で得た知見や刺激は、今後の各々の研究に活かし得るものも多く、全体として非常に良い学びの機会だったと考えています。



08. 東京大学A   pdf / code

発表概要: 我々は、松山中心部を対象に車線数の変動に応じた自転車レーン設置施策について、逐次リンク経路選択モデルを用いてシミュレーション評価を行った。パラメータの推定には従来のRecursive Logitモデルによる推定法に加えて逆強化学習(IRL)の手法を用いて両者を比較した。車線数の変動に伴う自動車・自転車の経路選択行動を段階的に記述するモデル構造により、一部の自転車レーン施策が自動車・自転車双方の効用を高めるということを明らかにした。

感想: パラメータの推定ではエラーに悩まされ続け、試行錯誤を繰り返していたが。結果的に数値を出せた。2通りの推定手法について、本来パラメータ値が同一となるべきだが、かなりの差が生じてしまっていた。原因の考察やモデルにおける割引率の解釈が深められなかった点が今回の反省点である。全体を通じてモデルの理解が深まったとともに、機械学習という従来の行動モデルとは別の分野におけるモデルとの接点を整理できたのは大きな成果だと思う。



09. 東京大学B   pdf / code

発表概要: 駐車場を起終点とするまちなか徒歩回遊行動をGRLモデルで記述し、駐車場配置が徒歩回遊範囲に与える影響を評価した。また、自動運転や乗り捨て型カーシェアの発展により、駐車場まで戻ってくる制約がなくなった場合の回遊範囲の変化をシミュレーションした。

感想: 今回の夏の学校で、課題を設定してモデルを構築し、PPデータの抽出からマップマッチングし、パラメータ推定を行って政策シミュレーションをするという、行動モデルに関する一連の流れを経験できたのは非常に有意義でした。実際にデータに触れることで、理論の理解も深まったように思います。定式化や推定自体はまだまだ荒削りな部分も多くなってしまいましたが、今回の経験を踏まえて、今後自分たちの研究をより良いものにしていければと思います。最後になりましたが、ご指導いただいた講師の先生方に感謝申し上げます。



10. 芝浦工業大学   pdf / code

発表概要: 運行間隔と列車待ち時間の関係について、ホーム外や改札外での待ちを考慮して分析しました。また、列車待ち時間が運行間隔の1/2と推定したモデルの場合で感度分析を行い、選択確率の乖離を示しました。

感想: 私たちは、PPデータの利点である移動軌跡を分析し、ホーム外や改札外での待ちを考慮した「列車待ち時間」を運行間隔に基づき推定しました。豊洲、横浜、松山のPPデータを1トリップ毎にGIS上で見ていき、待ち時間を特定する作業は大変でしたが、PPデータの新たな活用方法を提案することができたと思います。結果としてDavis賞を頂き、非常に有意義な体験となりました。最後にご指導いただいた講師の先生方、運営の皆様ありがとうございました。



11. 早稲田大学AB   pdf / code

発表概要: H20年度PT調査を基にした、MNLを用いた埼玉県における75歳以上の高齢者の免許返納促進政策の策定を目的とした交通手段選択モデル構築の試み

感想: 私たち早稲田大学は今回が初参加で慣れぬことも多く、説明変数の少ないPT調査を用いたこともありモデルを構築し政策を提案していく段階にまで進めることはできませんでした。NLでモデルを構築していくこと、パラメータやt値の評価を政策策定に落とし込んで考察していくことなどやるべきことを多く残してしまう結果となってしまったので、今回の教訓を今後の研究等に活かしていきたいと思います。最後に運営・講師の皆様、私たちへの講義や様々なアドバイスをありがとうございました。



13. 早稲田大学C   pdf / code

発表概要: Coming soon...

感想: Coming soon...



14. 東京工業大学   pdf / code

発表概要: 傾斜度に着目した横浜市交通手段分析というテーマのもと、居住地の地形的特徴が交通手段選択に与える影響を、mixed logit modelを用い推定しました。モデルの特徴として、個人毎の坂への抵抗感を考慮するためにmixed logit modelを用い、さらに歩行時間と傾斜度の相乗効果が選択に与える影響を明らかにするための交互作用項を導入しました。

感想: まず、横浜市の地形的特徴として坂が多いとイメージがグループの共通認識として挙げられたことから、GISデータを用いてメッシュ毎の傾斜度を算出し、それらを説明変数に組み込むことで坂の勾配が交通手段選択に与える影響を把握することを試みました。モデルに関しては、2日目の事前課題発表後に先生方からのご指摘を基に構築したことから、かなり時間的に厳しい状況でしたが、サンプルのばらつきの少なさよりt値が有意なパラメータが少ない推定結果ではあったものの、mixed logit modelを用いて様々な要因を考慮したモデルを構築できたこと、さらに先生方からのサンプル抽出方法や変数の導入に関する新たなご指摘を頂けたことから、今後の各個人の研究での分析に繋がる機会となりました。ありがとうございました。



15. 山梨大学   pdf / code

発表概要: Coming soon...

感想: coming soon...



16. 名古屋大学   pdf / code

発表概要: 横浜市の公共交通の推進に向けた交通分析

感想: 私たちのチームは、横浜市が政策目標として掲げている、マイカー交通から公共交通への転換促進に着目し、アクセス・イグレス時間の短縮が公共交通シェアに及ぼす影響について分析しました。しかし、今回の演習を通してモデルの理解も、交通への知識も足りていないことを痛感しましたので、今回の経験を糧に、モデラーとして更なるレベルアップを目指したいと思います。



17. 神戸大学   pdf / code

発表概要: 我々は、複数交通手段のサブスクリプション型サービス(MaaS:Mobility as a Service)が交通手段選択に及ぼす影響を分析した。分析は豊洲エリアを対象とし、MaaSのサービス例にはフィンランドで展開されているWhimを用いた。Cross Nested Logitモデルを用いて分析した結果、豊洲エリアにおいて、上記のサービスは交通手段選択にほとんど影響を与えないという結果が得られた。

感想: 我々は、豊洲エリアにおいて、MaaSが交通手段選択に与える影響分析をしました。公共交通機関の利用が大幅に増加するという仮説を基に検証しましたが、MaaS導入後も交通手段選択は大きく変化しませんでした。当初考えていた結果と大きく異なりましたが、先生方からこの結果は「豊洲にMaaSを導入しても効果が薄いことを示している」とのお言葉をいただきました。このように、出た結果を素直に評価することが大切だということを学ばせていただきました。今後は他地域でも分析を行い、地域特性による差異を分析したいと思っています。最後に、関わっていただいた全ての方々に感謝申し上げます。ありがとうございました。



18. 広島大学   pdf / code

発表概要: 曜日の違いは人々の余暇活動に影響を与えていると考え、横浜(2009)と豊洲のデータから分析した。基礎分析では曜日間での余暇活動の変化が発見された。今回、NLモデルで当初は求めたが有意な値が出ず、MLモデルで曜日ダミーを導入して効用関数から有意性を調べた。しかし、横浜と豊洲それぞれ有意な値が出なかった。またプレミアムフライデーの導入による効果も検証したがデータ作成が間に合わず、今後の課題となった。

感想: 広島大学チームは今回、曜日による労働後の人々の余暇活動の変化に注目し、曜日間の比較に加え、政府が現在実施しているプレミアムフライデーといった政策の導入の効果を横浜と豊洲のデータから検証しました。結果としてはモデルの組み立てや運用に苦戦し、満足な答えにたどり着けないという悔しい結果となりました。しかし、夏の学校の講師の皆様のご講演や他のチームの発表やその姿勢から学んだことは多く、密度の濃い時間を過ごすことができ、一人一人のスキルアップに加え、それぞれの課題を発見できました。この経験を各々の今後の研究に生かしていきます。最後に運営の皆様、講師の皆様、TAの皆様に心からの感謝を申し上げます。




表彰 Award

行動モデル夏の学校には例年、数理的にモデリングをつめられていたグループには、故・上田孝行先生にちなんだ香住賞が、行動分析によって興味深いfact findingを実現したグループには、故・北村隆一先生にちなんだDavis賞が、モデルの精度指標が最も高かったグループには、精度指標の一つである尤度比にちなんで尤度比賞が送られます。今年度の受賞チームは以下の通りです。

香住賞:15. 山梨大学

Davis賞:10. 芝浦工業大学

尤度比賞:05. IIT Mumbai

 

1位:08. 東京大学A

2位:05. IIT Mumbai, 09. 東京大学B, 15. 山梨大学, 17. 神戸大学


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