研究室TOP講座2017理論談話会2017

概要

都市生活学・ネットワーク行動学研究グループでは,夏学期に理論談話会を行っています.輪講形式で各1時間ずつの発表を行い,広く研究室外の方とも議論して理解を深めていきます.

場所:工学部1号館347号室

日程


発表者担当論文
4月15日(土) 9:00-9:45植田 空間経済学―都市・地域・国際貿易の新しい分析(第1編 背景となる関連研究)
9:50-10:50井澤 同上(第2編 労働移動と地域の発展)
11:00-12:00山本 同上(第3編 都市システム)
4月28日(金) 7:00-8:00福山同上(第4編 国際貿易)
8:00-9:00山野 A link based network route choice model with unrestricted choice set

発表

実施済みの回について,発表概要と資料・議事録をまとめています.

#1-1

空間経済学―第1編 背景となる関連研究

空間経済学の礎となっている古典的なモデルを紹介した.都市経済学からはチューネンの土地配分とその応用であるアロンゾの単一中心モデル,マーシャルの外部経済理論,ヘンダーソンの都市システム理論,副都心モデルなど.また地域経済学からはクリスタラーとレッシュの中心地理論,基盤乗数理論でのプレッドの動学的考察,ハリスの市場ポテンシャルに関する考察.これらの理論は集積力の考慮や空間的次元を欠き,分散と集積の力関係が不明確であるなど問題は残っているが,いずれも空間経済学の背景を形作ってきたものである.

(藤田昌久,P.クルーグマン,A.J.ベナブルズ(2000)「空間経済学―都市・地域・国際貿易の新しい分析」,小出博之訳,東洋経済新報社,pp.17-46.)

発表資料
議事録

#1-2

空間経済学―第2編 労働移動と地域の発展

単一中心理論などの基礎経済理論を下敷きに,空間経済の基本アプローチであるDixit-Stigrirzモデルから複数立地モデルの生産者利潤拡大による複数立地モデルへの拡張の定式化を確認したうえで,経済地理モデルのCore-Periphery構造の解特性を通じ,単一中心システムから階層システムの自己組織化への発展,単一中心構造の均衡条件について,市場ポテンシャル関数とブラックホールの非存在条件から都市の離脱や空間的発展パターンについて考察する.

(藤田昌久,P.クルーグマン,A.J.ベナブルズ(2000)「空間経済学―都市・地域・国際貿易の新しい分析」,小出博之訳,東洋経済新報社,pp.47-118.)

発表資料
議事録

#1-3

空間経済学―第3編 都市システム

第3編の「都市システム」では,現実に見られるような複数の都市が階層性を持って分布する複雑なシステムを,第2編で導入を進めてきた経済モデルで記述することを試みている.まずフォン・チューネン型の単一中心構造を分析の出発点として,単一中心構造の持続可能条件について論じ,さらに単一中心構造が持続可能でなくなった後に新都市がどのように出現していくのかについて,直線状の経済を仮定して数値シミュレーションによって明らかにした.また,クリスタラーやレッシュが提唱しているような都市間の階層構造の生成についても,産業別にパラメータを設定することによって十分に再現し,著者の提唱している空間経済モデルの現実への適合性の高さを証明している.

(藤田昌久,P.クルーグマン,A.J.ベナブルズ(2000)「空間経済学―都市・地域・国際貿易の新しい分析」,小出博之訳,東洋経済新報社,pp.119-238.)

発表資料
議事録

#1-4

空間経済学―第4編 国際貿易

第4編では,第2編,第3編と同様の分析手法を用いて,国際貿易によって生じる産業の地理的分布の変化が記述される.ここでは,国境を挟んで労働が移動できない代わりに中間財の需給による産業間の連関が導入され,この効果により,輸送費用の変化に応じて産業の集中・拡散が発生することが示されている.シンプルな2国モデルで国際的不平等の発生過程を再現するとともに,モデルの仮定を少しずつ変えることで,経済成長に伴う格差拡大と均等化,産業集積の形成過程,国境を設定しない場合の産業特化の自己組織化,貿易自由化による国内産業立地の変化といった多様な現象が説明され,提案モデルがもつ高い柔軟性・一般性が確認できる.

(藤田昌久,P.クルーグマン,A.J.ベナブルズ(2000)「空間経済学―都市・地域・国際貿易の新しい分析」,小出博之訳,東洋経済新報社,pp.239-341.)

発表資料

#1-5

A link based network route choice model with unrestricted choice set

ランダム効用理論に基づいて,リンクベースで期待効用を表す価値関数を導入したBellman方程式を立てることで,経路選択肢の列挙を必要としないRecursive Logitと呼ばれる動的経路選択モデルを紹介した.このモデルでは,経路選択肢の個数に制限を設けることなく,各経路の選択確率がMNLモデルの場合と似た形で記述できることを確認した.また,Path-Size Logitモデルと同様に,重複したリンクを含む経路の効用に対して,リンクにおける期待交通量でLink-Size修正項を定義し,数値シミュレーションと実データを用いたモデル検証と推定によって,モデルの有用性を示した.

(Mogen Fosgerau, Emma Frejinger, Anders Karlstrom(2013):Transportation Research Part B, Vol. 56, pp. 70-80.)

発表資料