概要

BinN(Behavior in Networks)セミナーは、不定期に開催されるネットワーク上の行動理論とその実装に関する研究会です。自分の問題についてじっくりと掘り下げてオープンに議論したい全国の若手研究者、学生の皆さんの参加をお待ちしています。

本セミナーは以下の科研費の助成を受け開催しています。

・科研基盤A(課題番号:25249069) ネットワーク上の交通行動を記述するためのデータ統融合理論とその応用(代表:羽藤英二)

・科研基盤A(課題番号:21246080) プローブ技術を援用したデータフュージョン理論による総合交通行動調査(代表:羽藤英二)

・科研基盤A(課題番号:15206059) day-to-dayの動的な行動調査・解析システムの開発-移動体通信システムによる大規模な位置特定データベースを基本にして-(代表:羽藤英二)


比較的大きな背景、プロジェクトの狙い

文明装置としての車を最大限生かすための都市とそのガバナンス.そうした20世紀の仕組みは,21世紀に入って大きく変化しようとしています.わが国における(絶望的なほどの)就業人口の減少,女性や前期高齢者が働きやすい社会移動空間の模索,老朽化が予想される都市インフラのリスク管理,自転車やEVを最大限に生かした低炭素型都市のモビリティデザイン,きめ細かな交流を前提にした魅力的な移動風景の再生,スピード感のある都市計画とそのマネジメントの実現.私たちの都市の未来を巡るこうした多相的な問題と向き合うとき,かつて焼け野原となった私たちの国土を目の前にして天才角栄が考え出した「均衡ある国土の発展」という目標,そして道路特定財源を最大限に生かしたそのための社会システムを,次の100年に向けてより高度に再展開していく必要があることに気づくはずです.

道路計画や都市交通計画といわれている分野では長らくの間,アンケート調査を基本にゾーン一括りにした観測-モデルシステムが用いられてきました.そこでは概ね,1平方km程度の空間単位と10年-3年に一度という大掛かりな観測-計画スケールが無意識に設定され,平均的な一日を再現し予測すべく,性別や年齢を基本にした予測と計画がなされてきました.しかしかつては十人一色といわれた社会構造は一人十色と多様化しています.ケビン・リンチやヤン・ゲールの名著を引用するまでもなく,町を少しでも自分の足で実際に歩いてみれば,道路という都市空間はまちの魅力を高めると共に,公の精神を涵養する上で根幹となりえるきわめて重要な装置だと気づくはずです.であるが故に,確かに通勤通学の混雑緩和は重要な政策課題ですが,アンケートによる母集団の代表性と平均的な一日を想定した従前の道路交通計画を金科玉条のように唱えるだけでは,21世紀の都市を構想するのに十分とはいえないでしょう.おそらくは,先に述べたような多相化する政策課題に対して最適解とはいわないまでも,もっと豊かな政策アイデアを,もっとスピード感をもって考えていく必要があって,その際,まったく新たな観測-モデルシステムを私たちは必要としているのではないでしょうか.

このような問題意識を下敷きに,本研究プロジェクトでは,国勢調査や道路交通センサスやPTなどの既存調査と,プローブパーソン技術(※)を基本にした高精度・長期間行動データを組み合わせたデータフュージョン理論を援用したまったく新しい都市空間における総合移動活動モニタリング-分析手法の確立を目指したいと思っています.このプロジェクトは2009年4月~2013年3月の4年間にわたって行うもので,GPS携帯電話や低エネルギー消費型の行動センシングデータ技術,day-to-dayの長期パネルデータの統計解析技術,大規模DBと一体化したスーパーマイクロシミュレーションや行動文脈解析検索エンジンの開発によって実装された諸システムを援用しながら自転車の共同利用やオークション型交通サービスや交通環境ポイント,モビリティメッシュネットワークなどの様々な交通サービスの展開を考えてみたいと思っています.