

SCROLL
移動革命がもたらす都市の変貌と可能性に向けて
Urban Transformation and
Mobility Revolution towards Tokyo 2050
交通の技術革新がもたらす社会的インパクトを広く議論し, 次世代の都市-交通デザインに必要なモビリティエンジニアリングの理論から応用の現場に至るまで, そのフロンティアを共有します.
プローブパーソン調査および行動モデルのコーディングに基づく具体的な政策立案や, 都市のフィールドスタディーによる国際比較等を行い,次世代の国土・都市・地域ヴィジョンとそれを支える基盤の在り方を, 臨海地区を中心に提言・発信します.
産・官・学の連携,さらに社会基盤・建築・都市の3専攻の協働により, 海手線の移動サービスと拠点となる結節点の都市デザインを実装します. この実践を通して,より深い理論の理解とヴィジョンの精緻化を進めていきます.
2019年夏,東京大学次世代都市-交通デザイン研究体が, 工学系研究科の新たな社会連携講座として本郷でスタートします. 本講座は,東京大学工学部の社会基盤・建築・都市の三専攻が連携して, 次世代都市-交通に関する理論研究と社会実装・教育を行うために設置するものです.
11世紀の十字軍遠征による陸上交通の改善は当時の封建社会を崩壊させ, 15世紀の大航海時代の到来はアントワープやリスボンといった臨海巨大都市を自然させました. その後起こった産業革命はNY・ロンドン・東京をメトロポリスとして発展させてきました. より速い交通の外挿が大きく都市発展させてきたといっていいでしょう.
かつて東京大学の丹下研究室では東京計画1960が描かれました. 下末吉面から東京湾後部に向けて新たな交通インフラを展開することで, 当時激化していた交通混雑改善に向けて,彼らは世界にさきがける新東京構想を示したわけです. 交通-建築-都市が一体となった「装置」概念としての新東京像が示されました.
2050年に向けて,国土の交通-情報軸は中央新幹線や5Gによって超高速化し, 非線形な超高速接続が実現していくことになります.その一方で,首都圏では鉄道の遅延が相次いでおり, 2017年時点の20代外出率は70代のそれを下回り移動欲求を低下させつつある. これらの事実は都市と移動の新たなフラグを示しているのではないでしょうか.
今,私たちは何を描くべきでしょうか.
地方と東京の関係について,藤田・クルーグマンら(2000)によれば,継目のない国土・地域モデルを仮定するとき, ブラックホール効果が存在することを示しています。都市の集積のパターンは経路依存するものの, 基本的に交易費用の低い都市に集約化されていくブラックホール現象が理論的に示されていますが, 現実には,集積には混雑効果をはじめとする外部不経済が存在します.私たちは都市の利便と経済を享受する一方で, 混雑や暮らしづらさに起因する少子高齢化といった負の外部性を解決するには至っていません.
三陸の海沿いに展開された町々の始原の姿は山裾に小さく自然したそれでしたが, 20世紀になって三陸鉄道が外挿されたことで,地域の重心は津波リスクの高い海側へと引っ張りだされることになります. これに対して大船渡では,瘤のような山を土木技術で切りとおし山側にバイパスを通すことで新たな交通軸を設け, 山側に重心移動させることに成功します. 今後起こりうるであろう巨大災害に向けての事前復興の可能性を示唆していると考えていいでしょう.
巨大なインフラに支えられえてきた従前の都市が外部不経済による混雑悪化や移動欲求の低下を解決できなくなるなかで, この50年で計算機の速度は10億倍速くなっています.移動する建築としての新たなモビリティ技術が顕れ, 巨大都市移動データベースとハミルトン閉路マッチングに基づくリアルタイムな動学的都市設計理論の可能性が広がりつつあります. 私たちは,空間経済と都市形成史の研究成果を下敷きに,新たな都市-交通設計理論に基づく次世代都市-交通の研究・社会実装・教育を, さまざまな企業・自治体・大学の皆さんと一緒に試みたいと考えています. 次世代都市-交通デザイン研究体へのご支援なにとぞよろしくお願いいたします.