概要
組み合わせ最適化や一般均衡問題,最適化理論などについて,具体的な問題を想定した論文輪読とプログラムの実装を通して基礎理論の習得を目的に開催します.
1.コア選択オークションと最適シグナル,不確実性:
財の組み合わせ問題を配分ルールから理解するうえで,コア選択やオークション,収入同値や,均衡相関,ビリーフデザインといった概念に加え,不確実性下の意思決定組み合わせ問題として考えることは,さまざまな鼓動選択肢の組み合わせの調整を図る都市と交通の研究でも必須といえよう.ここでは,コア選択オークションと最適シグナル問題,シェアリング意思決定や不確実性下の意思決定に着眼して,数本の論文のレビューを行う.
2.交通配分と土地利用均衡問題:
肱川や高梁川といった流域圏の土地利用立地問題や,首都圏におけるネットワーク整備の歴史を考える上で,複数主体(住民やダムなどのインフラ整備政策決定者)の意思決定問題を多段階で定式化することは必須である.ここでは,土地利用と均衡配分の同時決定問題の理論修得を目的に,何本かの論文を精読する.
3.エントロピー法と離散凸解析:
離散凸解析,共役関数,双対理論,変分法といった最適化理論の基礎に加え,マトロイドなどを用いた組み合わせ最適化の手法論とメタヒューリスティクスについて学び,パラメータ推定と,組み合わせ問題の解法とその数学的性質理解を試みる.
日時/場所:
2018年9月8日(土) - 2018年9月10日(月) @今人庵 in 今治
対象図書:
坂井 豊貴,メカニズムデザインと意思決定のフロンティア,慶應義塾大学出版会,2014.
Jorge Nocedal, Stephen J. Wright, Numerical Optimization, Springer, 2006.
日程
日 | 時間 | 発表者 | 担当内容 |
---|---|---|---|
9月8日(土) | 13:30-14:20 | 飯塚 | メカニズムデザインと意思決定のフロンティア(第1章 グローヴスメカニズム,第2章 コア選択オークション) | 14:30-15:20 | 清水 | Network-oriented household activity pattern problem for system optimization | 15:30-16:20 | 出原 | Simultaneous optimization of horizontal and vertical alignments for highways | 16:30-17:20 | 山本 | Optimal Transport Networks in Spatial Equilibrium | 17:30-18:20 | 山野 | A method of integrating correlation structures for a generalized recursive route choice model | 18:30-19:20 | 飯塚 | Numerical Optimization(Chapter3 直線探索法, Chapter4 信頼領域法) |
9月9日(日) | 9:00-18:30 | - | プログラムスタジオ |
発表
#1-1
メカニズムデザインと意思決定のフロンティア(第1章 グローヴスメカニズム,第2章 コア選択オークション)
メカニズムデザインの基礎として,準線形環境においてパレート効率性と耐戦略性を満たすグローヴスメカニズムとそれを組み合わせオークションへ適用したVCGメカニズムについて定義と性質を説明した.また,VCGメカニズムより強い概念である,社会の一部分がグループ(提携)を組んで逸脱し,彼らの中だけで資源配分を行ったとしても元の配分以上の利得を得られない状態であるコアの概念を導入し,コア選択オークションについての定義とその性質を説明した.
(坂井 豊貴,メカニズムデザインと意思決定のフロンティア,慶應義塾大学出版会,2014.)
●発表資料
#1-2
Network-oriented household activity pattern problem for system optimization
Recker(1995)を端緒とする従来のHAPP(Household Activity Pattern Problem)を,高次のスーパーネットワークと少数の制約式により記述し,通常の最適化手法や最短経路探索アルゴリズムにより求解可能な形で再定式化した.この定式化のもと所与の数値設定において簡単なシミュレーションを行い,活動の効用値が車両の経路選択や世帯メンバーの活動選択に及ぼす影響を分析した.ネットワークに時間制約や活動効用,移動コスト等を組み込むことで実ネットワークと諸制約を直感的に分かり易く記述しているが,動的な世帯間均衡問題の記述には課題が残る.
(Liu et al., Network-oriented household activity pattern problem for system optimization, Transportation Research Part C, 2017.)
●発表資料
#1-3
Simultaneous optimization of horizontal and vertical alignments for highways
高速道路建設計画において,地理的制約に加え,諸々の社会制約のもとでコスト最小化となるルートを如何に決定するかというのが重要となる.本論文では三次元空間上で3次スプライン補間を用いて制約条件下での最適ルート決定手法を確立している.論文中では盛土・切土コストや舗装コスト,勾配・曲率制約を定式化し,スプライン係数を最適化するという枠組みでルートを決定する.実際の敷地を対象にした計算例を加えた上で,手法の有意性を示しており,制約条件の立式を工夫することで更なる応用が期待できると述べている.
(Chew et al., Simultaneous optimization of horizontal and vertical alignments for highways, Transportation Research Part B, Vol. 23, pp. 315-329, 1989.)
●発表資料
#1-4
Optimal Transport Networks in Spatial Equilibrium
これまでの研究ではそれぞれ独立に扱われていた労働と財の一般均衡,最適輸送問題,最適ネットワーク配置問題を(問題の凸性に関する一定の仮定を置いた上で)同時に解くフレームワークを提案している.交通ネットワークへの投資を1つの変数として労働者の効用の和を計算しているので,実際の交通ネットワークを拡張・再配置した場合の効用(社会的厚生)の変化が計算可能であり,ヨーロッパの実ネットワークを用いて1.実ネットワークを拡張した場合2.実ネットワークを反事実的に再配置した場合の2パターンについて社会的厚生を計算し,GDPの低い諸国において道路ネットワークが非効率的に配置していることを明らかにした.
(Fajgelbaum, Schaal, Optimal Transport Networks in Spatial Equilibrium, 2017.)
●発表資料
#1-5
A method of integrating correlation structures for a generalized recursive route choice model
既存のRecursive Logitモデルの各意思決定時における選択行動がMNLとして仮定されているのに対して,n-MEVモデルを導入することでCNLを仮定したRCNLモデルなどへの拡張を行った.また,そのモデルの推定計算の負荷削減を目的として,経路選択問題について選択肢間の相関構造を実際の道路ネットワークへ組み込むアプローチを提案し,そのハイパーネットワークのもとで一体的に定式化が行えることを示した.
(Mai, A method of integrating correlation structures for a generalized recursive route choice model, Transportation Research Part B, Vol. 93, pp. 146-161, 2016.)
●発表資料
#1-6
Numerical Optimization(Chapter3 直線探索法, Chapter4 信頼領域法)
非線形連続最適化問題における基本的な近似解法である直線探索法と信頼領域法について,そのアルゴリズムを説明した.また,最適化問題における重要な性質である,大域的収束性と収束率について定義を確認し,これらの解法がこれらの性質を満たす条件を確認した.
(Jorge Nocedal, Stephen J. Wright, Numerical Optimization, Springer, 2006.)
●発表資料
#2-1
プログラムスタジオ
2組に分かれて各々異なる最適化問題を想定して取り組んだ.
A)モデル同時推定と最適化(山野,清水)
離散連続モデル,gRLモデルをMPECで解くことを前提に,構造推定とエントロピー法を理解し,未知パラメータを複数有するモデル推定の方法論の修得を目指す.
B)組み合わせ問題と最適化(飯塚,出原,山本)
gRLで記述したOD時空間パスの組み合わせマッチングについて,いくつかの資源配分問題を参照にしながら,コードの実装を行い,課題発表を行う.