研究室TOP講座2020理論談話会2020

概要

B4,M1を中心に,都市・交通理論に関する研究論文を精読し,輪講形式で発表,議論をおこないました.

場所:zoom

日程


番号発表者内容論文著者
第1回
5/12
1-1飯塚 避難So, Stella K., and Carlos F. Daganzo.(2010).
1-2出原 Network-deamon Michael G. H. Bell, Chris Cassir(2002).
第2回
5/19
2-1 石井 逆強化学習Ramachandran, Deepak, and Eyal Amir(2007).
2-2 月田 行動モデルMcFadden, Daniel(1978).
第3回
5/26
3 前田 土地利用高木朗義,森杉壽芳,上田孝行,西川幸雄,佐藤尚(1996).
第4回
6/4
4-1 飯塚 シェアリングZha, Liteng, Yafeng Yin, and Hai Yang.(2016).
4-2 鈴木 配分佐佐木(1965)
第5回
6/11
5-1 出原 空間経済Aguirregabiria, Victor, and Pedro Mira.(2010).
5-2 月田 行動モデルFosgerau, Mogens, Emma Frejinger, and Anders Karlstrom.(2013)
第6回
6/16
6-1 石井 時系列解析Hochreiter, Sepp, and Jürgen Schmidhuber.(1997).
6-2 前田 土地利用Xiaosu MA, Hong K. LO(2013)
第7回
6/18
7 鈴木 シェアリングHara, Yusuke, and Eiji Hato.(2018).

発表

実施済みの回について,発表概要と資料・議事録をまとめています.

1-1:避難

Managing evacuation routes.

単路の高速道路上でランプからの流入の優先順位を制御することで,避難人数と避難時間を最適化する手法を提案した.従来の手法と異なり,均質でないネットワーク上で,全ての需要・フロー情報を必要としない点に新規性がある.

So, Stella K., and Carlos F. Daganzo. “Managing evacuation routes.” Transportation research part B: methodological 44.4 (2010): 514-520.

発表資料
議事録

1-2:Network-deamon

Risk-averse user equilibrium traffic assignment:an application of game theory

ネットワーク利用者がリスクの発生を考慮して、期待コスト最小となるような経路を選択する メカニズムを、ネットワーク理論とゲーム理論の手法の等価性を利用しながら記述している。 利用者に加えて、利用者の総期待コストを最大化しようとする主体であるdemonを導入し、 n人の利用者とm体のdemonの非協力混合戦略ゲームを定式化したうえで、二段階最適化問題への 置換により、計算実行可能な形式の問題として記述している。

Michael G. H. Bell, Chris Cassir: Risk-averse user equilibrium traffic assignment:an application of game theory, Transportation Research Part B, Vol. 36, (2002), pp.671-681.

発表資料
議事録

2-1:逆強化学習

Bayesian Inverse Reinforcement Learning.

逆強化学習のタスクである報酬の推定を,ベイジアンアプローチを用いた報酬の事後確率分布計算により解決した論文.ベイジアンアプローチの主な課題となる分配関数の計算をMCMCを用いて対処する.この際,サンプリングした報酬ごとに価値関数の計算 (この論文ではQ学習を用いる) が必要になり,計算コストが大きくなる.この課題に対して,MCMCを効率化するPolicyWalkアルゴリズムも提案し,サンプリングステップ数のオーダーまで示している.

Ramachandran, Deepak, and Eyal Amir. “Bayesian Inverse Reinforcement Learning.” IJCAI. Vol. 7. 2007.

発表資料
議事録

2-2:行動モデル

Modeling the choice of residential location.

行動モデルの一種であるGEVモデルを提示した論文。それまでに存在したMNLモデルやNLモデルなどのモデルを、4つの特徴を持つG関数として一つの形にまとめ、これにより属性間の依存性の一般的なパターンを可能にした。また、本論文の後半部では選択肢の数を制限すること目標とした議論をしている。現実世界での選択行動において全選択肢の分析は非現実的な量のデータ処理となるが、選択肢同士の依存性や、グループの大きさを適切に考慮すれば、グループの代表のみを取り出して比較しパラメータ推定を行うことができる。

McFadden, Daniel. “Modeling the choice of residential location.” Transportation Research Record 673 (1978).

発表資料
議事録

3:土地利用

立地均衡モデルを用いた治水投資の便益評価手法に関する研究

治水投資の結果得られる便益を定量的に評価する際に考慮しなければならない、災害発生の不確実性、整備対象地域の地域性、社会全体への影響という3項目を全て組み込むために、不確実性下の多地域一般均衡理論に基づいた立地均衡モデルを構築し、等価的偏差EVの概念を拡張して用いた便益定義に基づいた便益評価手法を提案している。その際、不確実性下の便益を被害軽減額の期待値と定義するのは一般に過小評価であるとされることから、オプション価値という概念を導入した便益定義を行っている。

高木朗義,森杉壽芳,上田孝行,西川幸雄,佐藤尚,立地均衡モデルを用いた治水投資の便益評価手法に関する研究,土木計画学研究論文集,No.13,339-348,1996

発表資料
議事録

4-1:シェアリング

Economic analysis of ride-sourcing markets.

ride-sourcing市場の性質を集計モデルを用いて分析した論文.独占市場の場合,規制の効果,競合の場合などについて均衡点とその性質を理論的に検証した.

Zha, Liteng, Yafeng Yin, and Hai Yang. “Economic analysis of ride-sourcing markets.” Transportation Research Part C: Emerging Technologies 71 (2016): 249-266.

発表資料
議事録

4-2:配分

吸収マルコフ過程による交通量配分理論

車の流れを1つの吸収マルコフ連鎖として捉え,交通量の配分を行うことを提案した論文.発生交通量と集中交通量が等しく,また交通量がOD交通量を満たしているという制約条件のもとで発生交通量と遷移確率行列を定め,各街路の交通量の期待値を求める方法を記述している.車の流れを1つの吸収マルコフ連鎖として捉えた場合交通量が過大推定になるという問題に触れ,各OD交通ごとに吸収マルコフ連鎖として考え,それらを足し合わせるという方法も提示している.

佐佐木綱:吸収マルコフ過程による交通量配分理論, 土木学会論文集, No. 121, pp. 28-32, 1965.

発表資料
議事録

5-1:空間経済

Dynamic discrete choice structural models: A survey.

動的離散選択モデルの枠組みについて計量経済学の視点から網羅的にレビューをした論文.シングルエージェントモデル,動的一般均衡モデル,動学ゲームそれぞれについて,基本形と応用例,推定法,近年の研究の動向について解説している.

Aguirregabiria, Victor, and Pedro Mira. “Dynamic discrete choice structural models: A survey.” Journal of Econometrics 156.1 (2010): 38-67.

発表資料
議事録

5-2:行動モデル

A link based network route choice model with unrestricted choice set.

ランダム効用理論に基づき,リンクベースで期待効用を表す価値関数を導入したBellman方程式を立てることで,経路選択肢の列挙を必要としないRecursive Logitと呼ばれる動的経路選択モデルを紹介した論文.このモデルでは,経路選択肢の個数に制限を設けることなく,各経路の選択確率がMNLモデルの場合と似た形で記述できる.また,Path-Size Logitモデルと同様に,重複したリンクを含む経路の効用に対して,リンクにおける期待交通量でLink-Size修正項を定義し,数値シミュレーションと実データを用いたモデル検証と推定によって,モデルの有用性を示した.

Fosgerau, Mogens, Emma Frejinger, and Anders Karlstrom. “A link based network route choice model with unrestricted choice set.” Transportation Research Part B: Methodological 56 (2013): 70-80.

発表資料
議事録

6-1:時空間解析

Long short-term memory.

時系列データを扱うためのニューラルネット構造を提案した論文. 既往研究 (RNN等) の課題であった「長期にわたるデータの関係性考慮」を,誤 差伝播の課題分析を行った上で,CEC・入力ゲート・出力ゲートという3つの構 造の導入により解決している.実験により,提案モデルが長期短期双方の関係性 を考慮した予測が可能になることを示した.

Hochreiter, Sepp, and Jürgen Schmidhuber. “Long short-term memory.” Neural computation 9.8 (1997): 1735-1780.

発表資料
議事録

6-2:土地利用

On joint railway and housing development strategy

鉄道と住宅の単一デベロッパーによる共同開発について、付け値地代と一般均衡理論を用いてモデル化し、鉄道運用と住宅供給に関する最適戦略と開発が地代に与える影響を研究した論文。鉄道・住宅間の相乗効果により、共同開発は別々に開発するより消費者余剰・生産者余剰共に大きくなること、事業主体が民間か公共かによって最適戦略が異なることが示されている。

Xiaosu MA, Hong K. LO,On joint railway and housing development strategy, Transportation Research Part B, vol.57, pp.451-467,2013.

発表資料
議事録

7:シェアリング

A car sharing auction with temporal-spatial OD connection conditions.

乗り捨て型のカーシェアリングにおいて効率的な車両配分を実現するための利用権オークションの枠組みを提案した論文.オークションにおける落札者決定問題には戦略的操作不可能性が必要だが,VCGメカニズムを導入することによってそれを実現すると同時に,効率的な配分を実現できる.また,落札者決定問題はNP困難な組み合わせ最適化問題であるが,単一入札の場合はLP緩和問題を解くことで解を得ることができ,複数入札の場合の解法アルゴリズムも提案されている.更に,LP緩和問題の双対問題を考えることで,利用権価格が利用者の外部性を内部化するものであることを示している.

Hara, Yusuke, and Eiji Hato. “A car sharing auction withtemporal-spatial OD connection conditions.” Transportation Research PartB: Methodological 117 (2018): 723-739.

発表資料
議事録