概要
都市生活学・ネットワーク行動学研究グループで,夏学期の間,理論談話会を行っています.毎週2本,各1時間ずつの発表を行い,広く研究室外の方とも議論して理解を深めていきます.
日時:原則毎週金曜日18:30~,場所:工学部1号館409号室
日程
参考論文リスト
論文ゼミの中心となるテーマについて,参考になる論文をピックアップしました.
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発表
#1 4月24日
大山
A random utility maximization(RUM) based dynamic activity scheduling model:Application in weekend activity scheduling
概要
複数の活動パスを選択肢として考慮するプレトリップ型のアクティビティモデルに対して,逐次的な離散連続モデルを用いることでスケジューリングのプロセスをモデル化した.KKT条件によって演繹的に導出される構造型のモデルを推定し,週末の活動タイプ−活動時間の動的な意思決定を把握した.
(Khandker M. Nurul Habib, Transportation, Vol.38, pp.123-151, 2011.)
● 発表資料
● 議事録
#2 5月1日
浦田
Social Interactionのモデル化と均衡解
概要
Social interactionのモデルへの反映は古くから研究テーマとなっている.今回はそのモデル化の方法と均衡解の存在について整理する.また,social interactionには,二者間の交換・授受を指すものと二者間の影響を指すものがある.今回の発表では,既存研究の中で利他効用に特に着目し,3つの論文を紹介する.1つ目は経済モデルを用いた交換・授受のモデル化と均衡解の導出,2つ目は実験経済学を援用した交換・授受への社会的距離の影響の実証的分析,3つ目は他者からの影響の大きさによる均衡解の形成条件の分析に関する論文である.
(Brock, WA., Durlauf, SN.: NationalBureau of Economic Research, Technical working paper No. 258, 2000.)
● 発表資料
● 議事録
#3 5月8日
芝原
The network analysis of urban streets: A dual approach
概要
街路をノード,街路同士の隣接関係をリンクで表すDual graphを基礎として,街路線形からノードを集約して表現するICNモデルで6都市の街路構造を比較する手法を提案した.これを用いて歴史的な都市の街 路ネットワークがscale-free性とsmall-world性を持つことを明らかにし,次数相関のDisassortativityからVeneziaの歴史的な骨格が浮かび上がった.
(Porta Sergio, Paolo Crucitti, and Vito Latora.,Physica A: Statistical Mechanics and its Applications 369.2, pp.853-866, 2006.)
● 発表資料
● 議事録
#4 5月15日
吉野
Optimization of bus stop placement for routes on uneven topology
概要
アクセス・イグレスの際の勾配を考慮して、上位問題は、バスの停留所の配置の最適化、下位問題は利用者の配分といて二段階最適でモデルで解いた研究。GISを活用することで標高や道路特性の詳細なデータを取り扱い、大規模ネットワークの計算にも対応した。ケーススタディからは、勾配を考慮することで、上り坂を通過する経路の利用が減少し、下り坂・平坦な経路の利用が増加するという結果が確認出来た。
(Ceder, A., Butcher, M. and Wang, L., Transportation Research Part B, Vol.74, pp.40-61, 2015.)
● 発表資料
● 議事録
#5 6月11日
大山
Stochastic Preplanned Household Activity Pattern Problem with Uncertain Activity Participation (SHAPP)
概要
多くのアクティビティモデルがプレトリップ型の意思決定を採用しているものの,実際には不確実な状況に直面したとき,個人はスケジュールの変更を強いられる.本論文では,活動発生の不確実性(活動取りやめ確率:1-pi)を導入したスケジューリング最適化問題を,確率計画問題(二段階計画:リコース問題)として定式化した.制約条件の範囲を徐々に狭めていく切除平面法の一種である,L-shaped methodを解法として採用し,厳密解を求めた.
(Gan, L. P., Recker, W.:Transport Science, Vol.47(3), pp.439-454, 2013.)
● 発表資料
● 議事録
近松
トリップのOD分布を求める確率論的方法
概要
OD表推定の手法として,従来のエントロピーモデルを応用し,非対称なOD表にも対応したエントロピーモデルを提案した.これを現在パターン法とグラビティモデルと比較し,提案手法の特徴を抽出した.
(佐佐木綱:交通工学,Vol.2,No.6, pp.12-21, 1967.)
● 発表資料
● 議事録
藤垣
The Downs–Thomson Paradox with responsive transit service
概要
道路と公共交通の2手段からなる単純な交通ネットワークにおいて、道路容量を拡張すると、公共交通の利用者減少とサービス低下により、かえって利用者の効用が下がる結果になりうるという“Downs–Thomson Paradox’’が、Downs (1962)およびThomson(1977)により提唱されている。この論文では、公共交通運営者のサービスレベル調整方針(利益最大化または利益ゼロ水準維持)や、調整対象のサービス水準(運賃、運行頻度の双方を調整するか、一方のみを調整するか)と、“Downs–Thomson Paradox’’発生有無の関係を、解析的に検討するとともに、数値計算例を示している。
(Zhang, Fangni, Hai Yang, and Wei Liu. Transportation Research Part A: Policy and Practice 70 (2014): 244-263.)
● 発表資料
● 議事録
#6 6月19日
庄司
A new estimation approach for the multiple discrete-continuous probit (MDCP) choice model
概要
MDCPモデルを,MACML推定法を導入することにより高速かつ精度良く推定することが可能であることを明らかにした研究.MACML推定法は,多変量累積分布関数の近似手法により複雑な積分計算を回避し,さらに合成周辺尤度を考えることによりパネルデータにおける尤度計算を簡易化することから成る.これにより,多変量正規分布により表現される相関を含む離散連続モデルの推定を容易に行うことができるということを明らかにした.
(Chandra R. Bhat, Marisol Castro, Mubassira Khan: Transportation Research Part B, Vol.55, pp.1-22, 2013.)
● 発表資料
● 議事録
三木
A nested recursive logit model for route choice analysis
概要
期待効用を考慮したうえで次に進むリンクを逐次的に選択するという枠組みで経路選択問題を定式化したRLモデルに対して,リンクごとに固有のスケールパラメータを設定することで同じリンクをもつパスの選択確率の相関を記述できるように,NRLモデルを定式化した.期待効用の計算が非線形最適化問題となるが,実装に耐えうる初期値の与え方と計算方法が提案されており,実ネットワークに適用した場合の予測精度も他のモデルに比べると高いことが示された.
(Tien Mai, Mogens Fosgerau, Emma Frejinger: Transportation Research Part B, Vol.75, pp.100-112, 2015.)
● 発表資料
● 議事録
芝原
Understanding road network dynamics: Link-based topological patterns
概要
道路ネットワークの脆弱性評価を目的に,ネットワークの構造的特徴から最も重要な道路を明らかにする.各解析指標が表す重要性はそれぞれ特徴が異なるので,これら指標の成分比からクラスタリングを行うBiclustering approachを適 用する.結果,α-index,Bonacich Power,Degreeの3指標が優位に効いており, 高速道路よりも下道の道路の重要性が浮かび上がった.
(Susana Freiria, Bernardete Ribeiro, Alexandre O. Tavares.: Journal of Transport Geography, Volume 46, June 2015, Pages 55-66)
● 発表資料
● 議事録
近松
連続吸収マルコフ仮定を用いた交通量分析
概要
街路レベルでの交通流を表現するために,連続吸収マルコフ過程を導入した.連続マルコフ過程では,微分行列を用いて,連続時間軸でのマルコフ連鎖を漂げすることができる.実際に,とある街路空間を仮定し,微分方程式の導出を行い,街路の交通量を時間の関数として表した.また,この手法を使うことによって街路の長さや幅を考慮したモデルへと発展できることを示した.
(佐佐木綱,松井寛:第8回日本道路会議論文集,343号,pp.1086-1089, 1966.)
● 発表資料
● 議事録
#7 6月27日
山本
A hybrid multi-scale approach for simulation of pedestrian dynamics
概要
都市における歩行者の流動を2つの異なるスケール(マイクロスケールとマクロスケール)を統合したマルチスケールモデルを提案した. 従来のマルチスケールモデルとは異なり、双方のレイヤー間で得られる情報を共有し各スケールでの欠点を補完するかたちで, 計算負荷を軽減したモデルの構築に成功した. このモデルでは他の歩行者の存在や混雑の認知のされ方が考慮されている. このモデルを用い数種のケーススタディが行われ, より現実に近い歩行者流が表されることが示された.
(A. Kneidl, D.Hartmann, A.Borrmann: Transportation Research Part C, Vol.37, pp. 223-237, 2013.)
● 発表資料
● 議事録
笠原
An Econometric Analysis of Residential Electric Appliance Holdings and Consumption
概要
部分的に共通な要因によって関連づけられている離散連続的な状況を分析するモデルである,離散-連続モデルの嚆矢となる論文.離散選択として電力かガスの暖房-水熱装置の2肢選択を,電力消費を連続選択として離散連続モデルを定式化した.消費者と財の非観測性誤差を導入することで,需要関数を推定する際に生じる選択肢固有のバイアスを軽減することが可能となった.
(Jeffrey A. Dubin and Daniel L. McFadden: Econometrica, Vol. 52, No. 2, pp. 345-362, Mar., 1984)
● 発表資料
● 議事録
福山
式ゼミ
● 発表資料
● 議事録
#8 7月3日
福田(都市工広域研)
Rising trade costs? Agglomeration and trade with endogenous transaction costs
概要
交通網の発達による輸送費用の低下が必ずしも貿易費用の低下につながっていないという問題関心から、取引費用を考慮した空間経済学のモデルを構築する研究。輸送費の低下により向上し需要に正の影響をもたらす品質の変数を導入することで、輸送費用が低下した際に取引費用の増加によりかえって貿易費用が増大する局面が生じることを示された。加えて、そのような条件下では一極集中で均衡が成立するものの、分散した方が全体の福祉は向上することが、二地域からなる貿易モデルの分析を通して明らかとなった。
(A. Kneidl, D.Hartmann, A.Borrmann: Transportation Research Part C, Vol.37, pp. 223-237, 2013.)
● 発表資料
● 議事録
吉野(復建調査設計)
Enumeration on region partitioning for evacuation planning based on ZDD
概要
大規模災害が発生した際,地域内の複数の避難所を対象に.どの地区の人々をどの避難所に割り当てるかを計画するには,避難所に割り当てられた地区が連結であることの他に,避難所の利用者数の偏りを出来るだけ小さくする,避難所までの距離を出来るだけ短くするなど,様々な観点から避難所割り当てを検討する必要がある.本研究では,逆探索とZDD(ゼロサプレス型二分決定グラフ)の2つの手法を用いて,ある地域における避難所の地域割当について,避難所の容量や避難距離等の制約条件を満たす割当方法を全列挙し,その中から優れた割り当てを検討する手法を提案している.
(Takizawa, A., Takechi, Y., Ohta, A., Katoh, N., Inoue, T., Horiyama, T., Kawahara, J. and Minato, S.: In Proceedings of the International Symposium on Operations Research and its Applications, pp.64-71, 2013.)
● 発表資料
● 議事録