U30 都市計画-設計提案競技 2013
復興デザイン -静清計画2013を考える-
競技概要
提案内容:東京計画1960の10年後、丹下健三は静清地区マスタープランにおいて、静岡と清水という複数都市を対象としながらもモビリティ・建築・ランドスケープを包括的にデザインしたうえで、東海道メガロポリス構想と都市計画-設計を接続させた将来都市ビジョンを示した。
本都市計画-設計提案競技では、来るべき東海・東南海地震や人口減少といった計画リスクを事前想定したうえで、広域拠点としての対象地の個性を正面から受け止めた発展的な「復興デザイン」をテーマに、都市計画-設計提案を募集する。
土木・都市・建築分野におけるU30の若手建築家や技術者、大学院生、学部生の手による建築・モビリティ・ランドスケープ・歴史・防災といった専門領域を横断する縮退の時代の都市像に期待したい。なお、提案内容は静岡市内を対象とした建築、街路、オープンスペース、港湾、モビリティといった個別提案に限定することなく静清地区都市マスタープランや東海道広域計画といったスケールの大きな提案までを幅広く公募する。ただし、内容については未発表のものに限る。
要求図書:A1版用紙2枚、模型 ※当日持込
締切:一次提出 2013年9月7日(土)pdf形式
最終提出 2013年10月7日(月)pdf形式
応募資格:大学、大学院、高等専門学校及び専門学校に在籍している学生及びU30(2013年4月1日時点で30歳以下)の若手建築家・都市計画家・土木技術者で構成されるグループを対象とする。ただし、第1回・第2回(次項参照)にグループ代表者が参加できること。(第3回は受賞者のみ参加必須)
参加申込締切:2013年7月21日(日)17:00 受付終了
参加申込先:seminar [at] bin.t.u-tokyo.ac.jp ※[at]=@
申込内容:グループ代表者の連絡先及びグループ全員の氏名,所属,年齢(2013年4月1日時点)※申し込み多数の際、お断りする場合があります。
参加費:無料(実費)
日程:全3回開催
第1回 2013年7月28日(日)13:00~16:00
@東京大学(文京区)工学部1号館15番教室
…開催趣旨説明、講義
第2回 2013年9月9日(月)
@静岡県静岡市
…提案発表、審査講評、講義(陣内秀信)
※前泊者には8日夜に懇親会を予定しています
第3回 2013年10月27日(日)予定
@静岡県静岡市
…受賞者現地プレゼンテーション、パネルディスカッション
特別審査員:内藤廣(都市/建築/土木/建築家)、陣内秀信(建築史/都市史家)
審査員:羽藤英二(モビリティ)、窪田亜矢(景観計画)、山口敬太(土木史)、黒瀬武史(都市設計)
賞の種類:最優秀賞1点、優秀賞3点
お問合せ:hato [at] bin.t.u-tokyo.ac.jp (羽藤)までお気軽にどうぞ。※[at]を@に置き換えてご連絡ください
参考リンク
○ 静岡県
静岡県/都市計画区域マスタープラン
静岡県統合基盤地理情報システム
○ 静岡市
都市計画情報インターネット提供サービス
静岡市都市計画マスタープラン
清水港ビジョン - 静岡市(PDF)
○ その他
統計資料 - 清水港管理局
しずおか旧東海道マップ
競技結果
2013年9月9日に静岡市にて、U30 都市計画-設計提案競技を行いました。競技概要、競技結果、講評を紹介します。
最優秀賞:Infrastructure for you
チーム名:チーム日本設計
メンバー:永野真義、菊地原徹郎、堀諒平、宮崎恵子、横瀬寛隆感想:みなさんとともに厳しいスケジュールの中頑張ったかいがあったなと思います。巴川というところにたまたま着目したといえばたまたま着目したのですが、色々調べていく中で偶然調べていく中でたどりついたものが,非常に静岡清水の地形の中で育ってきたものと合ったのかなということを自分の中で非常に感じています。ありがとうございました。(永野)
優秀賞:襞織りの都市
チーム名:チーム大岡山
メンバー:佐多祐一、伊藤啓輔、永山悟、谷口亮、小田切萌、大和田勝文、宮坂知成
感想:大変過密なスケジュールで僕らもすごい全員が近くにいたわけじゃなくて、スカイプとかを使いながら打合せをしていったんですけど、全然静岡について印象を持っていなかったので、それを見つけられながらやれたことはすごい楽しかったなと思っています。ありがとうございました。(佐多)
奨励賞:LINE FUJI SHIMIZU SEA
チーム名:京都大学ULDL
メンバー:片岡由香、八木弘毅、中条匡臣、窪田有希、水牧達志
感想:ぼくらもOBの方たちと日程調整とか難しくて、忙しい中色々手伝っていただいて、ありがたかったです。今までやったコンペで一番厳しかったです。ありがとうございました。(中条)
奨励賞:うつ輪
チーム名:早稲田大学景観・デザイン研究室
メンバー:高野裕作、テ・イーシン、リム・ルオン、菊田遥子、宮本亮介
感想:デザインが、景観デザイン研究室でありながら、デザインがあまり上手でないということが、恥ずかしいばかりであります。そういう中でもインターナショナルといいますか、留学生のメンバー二人も含めてですね、厳しい状況の中で取り組めたということはとても勉強になったということと、あらためて、こういった広域の研究を考えるというのは、やっぱり、研究だけをしていているだけではなかなかないものですので、非常にあの勉強になりました.本当にすごいいい課題を与えていただいてありがとうございました。(高野)
奨励賞:双極流動都市静清2040
チーム名:東大都市工TUNA
メンバー:大山雄己、伊藤創太、山崎敦広、今泉孝章、芝原貴史、若林由弥
感想:都市計画コースでありながら、都市計画に本気で取り組んだのはわりと初めてで、というのは都市計画をやる機会がなくて、すごい苦労したんですけど、あと、旅館で模型を作るのも初めてだったんですけど、面白かったです。ありがとうございました。(大山)
講評
内藤先生
お疲れさんでした. まず,全体について,私が最近感じていることをちょっと短く述べさせていただきたいと思います. 今は,現実が未来をどんどん追い越して言っているように思います. これまで色んな事件ありましたよね,90年代からオウムがあったり,それから9.11が起きたときにまさかという気持ちがあって, 我々がイメージしてビジョンするよりも現実が先をいっちゃっているわけですね. そのあと,リーマンショックもあったし,そうこうしているうちに3.11があって,まさに僕らが考えているものの先に現実が来てしまうことになっている. 建築とか都市とか土木とかというのが,いつも後追いになっているんですね. 置いてけぼりを食っている. ひょっとしたらこの30年くらい,建築と都市と土木は常に現実の後追いをしている状態なんじゃないかと思います. 三陸の復興を見れば,よくわかりますよ. そうした中で,こういったプロジェクトを羽藤さんが立ち上げたのは,たぶん後追いではなくて先にいきたいという気持ちがあって,若い世代のイメージを先に出してもらって,今度来るときは後追いじゃなくて先読みだというふうにしたいんでしょう. そうするべきだと思います.
ここで,それができているかというということが大事なところかなと思います. そのためには,ディフェンシブに防御するだけではなくて,もうちょっと広いんじゃないかと思うんですよ. 例えば,人間が生きることとか死ぬこととか,暮らすこととか,半分は哲学的なことも含んでくると思うんですよ. そういうものも含めて当然ビジョンとして一般の人に分かりやすく提示する. 今日の説明の中でやや専門的過ぎる人もいましたけども,本当はもっと普通の人の言葉で語られるべき,大事なことほど普通の方に分かっていただけるような語られるべきだろうと僕は思います. 最初の日本設計チームの話を聞くと,実際にこの遊水地はやれそうな感じもあって,いつ?って聞かれたら今でしょという感じもあるんですよね. それからこれをヴァージョンアップしていくとすると,まあ建築計画がちょっと標準的というか収まりすぎるかなと思います. つまりみなさんの計画案が,もしここに一般の方がいらっしゃって,こういうアイディアを使ったらどういう街になるのかということを見にきたときによくわからないのではないかと思います. もう少しここに新しい価値と希望があるべきではないかなと思いました.
そのチーム大岡山については,評価したいのはですね,市の区画を示した図で生産緑地をかなり大規模に取っていて,大胆に土地を変えていくアイディアはいいというふうに思いました. これは,その西伊豆を救おうという,西伊豆と静岡の考え方,リニアと中央部分の考え方はなんとなくこんな感じかなと思いました.
それから,東大の双極流動都市というのは,これも良くできた案でした. ただ,既存市街地はこういうのはいいよなと思いつつも,もっと建築的にできるんじゃないかと,若いんだったらもっといけよと思うわけで,もうちょっと踏み込むと一枚目の絵がピリッとしてくると思いました.あと,建築に近いところがもう少し弱いかなと思いました.
それから,京大のチームのはなかなかいい案だったと思います. ただ,最後の,例えばオリンピックの鉄棒なんかでくるくる回っている間はいいんだけど,最後の着地に失敗するパターンがありますよね. 最後のところにもうちょっと説得力がないかなと,港湾地域のペデというのは横浜でも既にありますよね. あれがいいかどうかは別として,いまの路線を残して,もうちょっと広げてというんだけど,前段の受け方としてもうちょっと違う受け方のほうが良かったんじゃないかなという気がしました.
それから最後ですけど,うつ輪って早大のチームですが,実は僕はこの案を非常に重要な案だと言うふうに思っています. 5チームあって,浜岡原発のことについて触れたのはこのチームだけですよね. 私は,今,静岡で建物建てているのですが,地元の人と夜に飲み会になると,やっぱりみなさん浜岡原発のことが気になるというように言われるんですよね. だから,やっぱり浜岡の話を抜きにこの話を完結させるのは本当は違うんじゃないかと思っていて,その意味ではよかったと思っています. ただ,建築が.さっきもいいましたけど,大事なところはそういったことを受けてじゃあどういった都市を作るかという最後のところが建築が果たすところが非常に大きいと思うんですよね. つまり,一般の人は建築から街を理解するというところもあるわけで,普通の人とつながろうと思ったら,建築の姿形について語らないで,或いは語れないでやることはできないので,このチームそこの補強をもうちょっとしたほうがいいかなというふうに思いました.
それから,最後に,資料編で,統計研究所の人口推計が書いて引いてあるんですね. みなさんがプランナーとしてやっていく中では,人口推計がこうだからこういう街になりますというプレゼンテーションはそろそろやめる時期にきているんじゃなかと思います. たとえば,静岡のところがこう下がっているとしますよね.ここから上げるためにどうしたらいいかというのが計画ではないかと思うんですよ. 下がりますからこうなりますというのは,たしかにありますけれども,じゃあこれを1%でも2%でも上げるためにはどうしましょうかというのが,ひょっとしたらこれからのマクロの計画なのかもしれませんよね. それをちょっと覚えといていただきたいなというところで.
陣内先生
今日はとても勉強になりました. みなさんそれぞれの立場で課題を設定して,解決案を出していただいて,本当にいいなと思いました. 僕自身は,都市空間や地域のポテンシャルをどう読み込んで未来に繋げるかというのをテーマにしていて,これもある,あれもあるという風に着目点を引きだして,解決方法を導き出していくということが必要かなといつも思うんです.
それで,チーム日本設計の提案は,ある意味で今回の課題である災害を意識して,清水と静岡の両方を結ぶ目線もあっていいかなと思いました. 巴川に着目したというのは,僕も静岡を歩いて回ったときに,やっぱり巴川なしにはこの周辺は考えられないなと思っていて,とてもいいなと思いました.ただ,タイトルがinfrastructure for youとなっていて,巴川はほとんどこの中から浮かび上がってこない. これはもう一度ちゃんと考えてほしい.あとは,建築的にはもっとできる部分もあるかなと思います.
窪田先生
五つともいいところがたくさんあって,私自身勉強させてもらいました. 最優秀賞と優秀賞のチームというのは防災というだけでなく,もう少しパブリックな価値というのはなんなのかなというのを考えて,それがリアリティを持って語ってもらえたのかなと思いました.
日本ではまず戦災復興,震災復興という中で,減歩率を使ったやり方が出てきていて,これはプライベートをトップダウンでこれがパブリックだという形でした.これが前の時代の復興であったと思うのですね. そのあと,ずっとまちづくりの時代が続いて,プライベートをどうやったらコモンにできるかというのをずっとこうやってきたとも思うのですけど,ただそれだけではうまくいかないというのが今の時代の復興における私達の現実だと思うのですね.
もう一回,プライベートからコモンだけじゃなくて,プライベートからどうやってパブリックな価値を生み出すのかということを考えなくてはならない. チーム日本設計はそれを巴川の治水とか流域というところで考えているのですけど,水循環に目をつけていらして,チーム大岡山は中心市街地の賑わいをこれからどうやって未来につなげていくのかというところを真剣に考えていらしてて,それがこう伝わってきたのかなと思います.そういったところをどのチームもこれからも練っていっていただけるとありがたいかなと思います.
山口先生
まず,最優秀のチーム日本設計はまず広域を考える上で重要な推計をきちんとされているというのは非常によいなと思いました. 課題としては,まず内水の氾濫はちゃんと予測されているのですけど,津波の氾濫もあるのでそこも組み合わせたらよかった.
あと,優秀賞のチーム大岡山ですけど,計画の五箇条というのを適用されたというのがあって,それはその仮説的なものなのではないかなと思って,それが住民とたいしたときにオリジナルの一か条というのがプラスされるとさらに強いのかなと思いました. あともう一つだけ言うと,東大チームの計画は交通計画としてよくできていて,まちの将来ビジョンやまちが将来どうなるのかというストーリーが少し弱かったのが惜しかったかなと思います.
黒瀬先生
災害を考えると清水が一番厳しいこともあり,忘れないで清水のことも取り組んでいただいたことが全体を通してよかった.チーム日本設計は,同じようなことができそうなところがたくさんあるという場所を見つけているのが良かった. 貯木場の後であったり,河川の跡であったりということで実は巴川の流域にはああいう場所がたくさんあって,また内陸の工場跡地で使いやすいところを見つけてきており,かなり現実に即した内容になっており,いい評価をした.
少し遠くを見てほしいなと考えて,2040年のコンペを始めて,なかなか遠くを見るのは難しいなとは全体を通して思っています.例えば,京都大学の提案は面白い案だと思っているのですけど,じゃあ,工場が2040年まで残っているのかとか工場と高架の風景が一緒にいる時間はどのくらいあるのかとかそういうことを考えていくと,時間軸をそういう風に予測するというのは非常に大事であるなと思います.大変だけれどもそういったところに,みなさん一緒に取り組んでいただければなと思います.