社基2014基礎プロジェクト1を振り返る

陳理沙(TA)×梅澤祥太(B3)×前田翠(B3)×近松京介(B3)×三木真理子(B3) 聞き手:羽藤英二 ※この座談会は、東京大学工学部 社会基盤学科の3年夏学期に開講された 「基礎プロジェクト1」を終えて2014/9/21に、1号館3階で行われました。 羽藤:今日は基礎プロ1が終わったんで、みんなに集まってもらいました。 基礎プロ1はプランニング系の科目を兎に角一回やってみようということ で、今年は静岡の減災を考えた都市計画と社会基盤計画に取り組んでもら いました。公園や駅空間などの図面の描き方から、交通ネットワーク計画 まで座学した後、フィールドワークとグループワークで都市計画と街路や 広場のデザインに取り組んでもらったわけですが、それぞれ提案内容につ いて紹介してもらってもいいですか。 梅澤:僕たちの班は清水を対象地域としました。現地を歩いてみた結果、 大規模な商業施設であるドリームプラザ周辺は観光客や地元の人でにぎわ っていましたが、そこから離れると活気があまりないと感じました。駅と こうした施設がやや離れていること、またほかに魅力的な場所が少ないこ となどから、地域内を歩いて回ることはほとんど想定されていないようで した。 そのために回遊性というキーワードのもと、このエリアを安心して歩いて 楽しめる街にする提案を行いました。通常時の地域全体での魅力向上に加 えて、発生が想定されている津波からの避難も合わせて計画を考えました。 例として区役所付近に複数ある駐車場を利用状況に合わせて統合し、空い た土地を公園として整備することで、遊歩道沿いに憩いの空間を提供する ことがあります。他にも、巴川沿いに飲食店を誘致するエリアを設けるこ と、地域内の神社を巡るイベントの開催、東西方向の動線強化のため横断 歩道やペデストリアンデッキの新設などを盛り込みました。 羽藤:港町の界隈は面白いからな。なんか腹減ったな。 近松:へりましたね。 前田:我々の班は、今後静岡だけでなく日本が直面しており、また今後 さらに加速すると考えられる少子化問題・高齢化問題・人口減少問題、そ して防災対策の四点にまず注目しました。また、現地調査から、新静岡駅 側と呉服町商店街を中心とするエリアが御幸通りで分断されていること、 地下街・商店街の活気がないこと、駐車場・駐輪場が点在しておりそれら の使用率も低いということの三点を問題としてとりあげました。さらに、 今後加速すると考えられるこうした問題を解決するために、どのような街 にすればよいのかを考えた上で、理想の街のあり方に沿って、以上七点の 問題解決を試みました。 具体的には、商店街のリニューアル・地下街のリニューアル・街路や路地 の整備・御幸通りの整備・江戸川町交差点の整備・駐車場の配備・駐輪場 システムの構築・図書館の建設の八つの計画を実現し、静岡を子供からお 年寄りまで楽しめるバリアフリーにも配慮した街、それゆえ生涯ずっと住 み続けたくなる愛着を持てる街にしようと考えました。 羽藤:交通動線から施設配置を計画していたのが印象的でした。 三木:私たちの班は、安部川沿いの俵峰という集落を対象にプランを考え ました。46世帯、120人ほどの集落で、静岡駅まで車で40分ほどです。 安部川沿いには集落が点々と続いていますが、俵峰はそれらの集落とは違い、 3キロほど山道を登った高地にあります。そのため、山あいの茶畑の眺めが すばらしく、訪れるとまるでそこだけが隔離されているような非日常感を味 わえます。しかし、ここでは九州地方や海外の大規模な茶栽培に対抗できな いため、茶畑は徐々に畑やハウスに変わりつつあり、高齢化も進んでいます。 茶畑の減少や高齢化は俵峰に限らず、中山間地域全体の課題でもありますが、 集落同士の結びつきは強いとは言えず、住民は自分の住む集落から松冨や静 岡までを行き来するだけのようでした。 そこで私たちは、松冨をまちなかと中山間地域を結ぶハブ地点、並びに中山 間地域へのゲート地点として整備し、中山間地域の集落から俵峰のような観 光地のポテンシャルが高い地域を選び出して、茶産業がなくなったあとも観 光産業でその地域を支えられるようにと考えてプランを立てました。俵峰の 整備については、景観価値の高いところに限り造園のように茶畑を残し、残 りの場所で住民にできる限りの範囲で滞在施設や飲食店・売店をつくるとい うことにしました。今は可能性のある地域と提携してくれる旅行会社もある ので、いずれはそのような形で観光産業を育てていければいいなと思ってい ます。 羽藤:広域計画としての解法も合わせているのが面白いと思いました。地域 デザインのスケールでは基礎分析が大変でしたかね。 ▲個人課題では、一人一人が都市デザイン提案と、Rを用いた交通行動分析 を行い、みんなで相互に意見を貼り合い、講評を行いました。

無秩序に見えた避難ビルが、解析するとある理由で配置されていた(梅澤) 未知の発見があった。手を動かして気づくことに意味がある(近松)

羽藤:梅澤くんの班の分析はどうでしたか。 梅澤:僕たちの班は静岡の海側の清水の都市計画を考えたのですが、現状 をデータを用いて深く分析するということを最初はあまりやっていなかっ た。デザインというかプランでやりたいことが先に出てきて、でもそれは データ分析して考えたというよりは、コンセプトや思いが先にあった。だ から分析に着手したのは遅かったんですよね。津波避難に関する分析や人 の動きの分析とか。最初配られたCDにPTデータが入ってなくて、笑。分析 に着手したのは個人課題になってからとずいぶん遅かった。全体振り返っ てみても、最終提案に結局ちょっと分析結果をいれたくらいで深くは分析 できなかったように思います。もう少し早い段階から分析できれば、もっ と計画が考えられて、深まったのではないかと、今は思います。 だけど、個人課題では津波避難の分析をしたんですが、無秩序にあると思っ ていた津波避難ビルが、避難距離から解析してみると、ある理由で配置さ れていることが視覚的に納得できた。自分の頭で考えて思いもつかないこ とは、データを使って分析して、それを地図に乗せることで、目で見て納 得できたのは面白かった。 羽藤:データいれてなかったか、ごめん。思いもしない結果が出るのは分 析の醍醐味だよな。 近松:個人課題で分析を始めたのですが、ああいうふわふわしがちな話題 の中で、測地的な分析が一番必要ではないかと思う。分析が甘いと、せっ かくのいい計画もダメになる。でも分析だけではおもしろくない。個別の 分析から全体を体系化していくところに重きを置きたかったが、個人とい うか自分の分析に寄ってしまい、そこが葛藤だった。分析から静岡の性質 を見抜いて、それと提案を結びつける部分の議論の時間が足らず、分析と 提案を別々にやってしまったから、最終的に表面上のロジックがしっかり していても班の提案が最後バラバラに見えていしまったのではないかと思 う。 ただ、おもしろかったこともあって、計画を考えていく際に、まず自分の 思い込みがあるわけですが、それと関係なしに未知の発見があったってこ とです。手を動かして気づくことに意味があるように思います。錯覚かも しれませんが、都市が見えた気になる全能感は面白いなと思った。社会基 盤は全体の動きがわかって初めて計画を立てられるという面がある。分析 は絶対必要。でもグループワークの中で分析結果を十分に議論しないと深 まらない。しかし、時間も限られていて…そんな悩みがありました。 羽藤:PTを使ったまちなかの流動の発見的分析とデザインのセンスもよか ったと思いますが、いったりきたりしないといけないから、チーム全員で 意識を共有化する時間がたりなかったのかもしれませんね。 ▲A1班では、清水の空間史から、駅前銀座の衰退に問題を集約し、地震津 波対策、観光客対応や、高齢化と公共交通に課題を絞り込みました。

自分が地元の人のように町を見れているか、感じられているか(前田) 地図に落とし込めば見えてくるものがあった(三木)

前田:私たちの班は、最後まで私に限らず個々人が自分自身のプランに対 してこれでいいのかなと感じていたように思います。提案するプランに根 拠がないまま、感覚的に感じたことをベースに、個々人の提案を結びつけ たプランにしてしまっていました。もちろん、主観をはさまないようにプ ラン全体のストーリーを考えてはいたのですが、最後まで自分の自信のな さにつながったように思います。それは、結局自分が地元の人のように町 を見れているか、感じられているかに自信がないということだった気がし ますね。 羽藤:自分たちの日々の暮らしの中から生まれる感覚をベースに論理を組 み立てられていたのが印象的でした。高度な分析や複雑な論理で提案をつ くるよりも、計画の受け手が市民であるからこそちゃんと届く言葉になっ ていた。まちなかの問題を網羅的に抑えた上で、個々の案がバラバラな提 案ではなく、問題解決に向けて一貫性のある論理に仕上がっていたことに も特徴があったように思います。 三木:私の班は分析を十分にやれなかったという反省があります。まちな かに比べてデータ数が少なかったのでPT分析はやりづらかったと思いますが、 せめて地図とか地形をもう少し見て分析できればよかった。高低差とか、住 居と田畑・茶畑の位置を地図に落とし込めばもっと見えてくるものがあった かもしれないし、お茶の価格の変化もヒアリングしか根拠がなかったので、 価格や出荷ルートなどの裏をとればよかった。またPT分析に関しては、安部 川沿いの集落の方はよく買い物や通院に松冨というまちに行くとヒアリング で聞いていましたが、近松くんのPTデータの分析を見ると、松冨に交通量の 集中ができていて面白いとは思いました。 ▲模擬WSでは近松くんが市長役を務めるなど、様々な専門家を参加者が演じ て、静岡の都市計画と地域デザインについて議論しました。

お茶畑が綺麗な時期だったので、俵峰の魅力が最もよく現れていた(三木) 仮説を立てずに現地調査へ行ったことで、達成感を得られなかった(前田)

羽藤:フィールドワークはどうでしたか。 三木:晴れてよかった。笑。あとお茶畑がちょうど綺麗な時期だったので、 俵峰の魅力が最もよく現れているときに訪れることができたのが、その後の プラン作成に大きく影響したと思います。 羽藤:あの日は天気がよくて、川に入ったけど気持ちよかった、笑。 前田:私の班は、一応調査計画書を作成してはいたものの、これといって 仮説を立てずに現地調査へ行ってしまいました。その結果、これが問題だ! という静岡の問題点を下調べでは発見できず、現地調査で問題点を見つけ ようと考えていたので、他の班(特に近松君の班)のように「もともと 仮説があってそれを検証するために、これを調べたぜ!」みたいな調査 結果や達成感を得られることができませんでした。 ただなんとなくぶらぶら歩きながら、気になった自転車の台数や車の台数 はカウントしつつ、気付いたことや思ったことをメモしていて、なんとな くここのこれが問題かなあ?みたいな実感しか得られていませんでした。 それもあって、調べ方・調べた内容ともにこれで良いのかなあ?みたいな 不安空気がなんとなく漂っていたように思います。 羽藤:調査したことが腑に落ちるような感じが欲しかったということです かね。 ▲A2班は、PTを使った丁寧な分析をよくまとめていたものの、新旧2地区 と駿府城をつなぐプランに具体性が欠けていたとのコメントがありました。

ぼーっとして歩くのが大切(笑 (近松) 一人を1サンプルとして統計的にあつかうことに対する違和感(三木)

近松:僕は、案外ぼーっとして歩くのが大切だと思います。ただ何も考え ずに、ぐるぐる回る、そういう方法もあったんじゃないかと思います。た だ茫然と歩くことでその場の雰囲気というか街らしさというかそのような ことがわかることもある。その感じをもとに、夜話して、議論して。仮説 を持ってまちなかでアンケートはしたものの、結局分析ではPTが主役になっ て、アンケートは添えた程度。フィールドワークで何かを得なきゃという のは、目的意識につながるんだけど、それが強いと、街全体の雰囲気をつ かむのが難しい。 羽藤:知識があると、見えなくなるものもありますよね。設計や計画に入 る前から決めつけないで、気に入ったところ探して、ぷらぷらと町を歩く のって大切だと思います。 梅澤:僕たちの班では、最初からこれを深く調べようとか、細かく計画し ていたというわけではなくて、特に1日目は観光気分で清水を楽しんだよ うな気がします。だから素朴に「ここいいな」とか「気になるな」という のがわかった気がする。でも、回数を重ねると、何を見るかなど目的を持 たないといけないという感じもわかります。 三木:歩いたり雰囲気を感じるのも大事だと思います。それに加えて私た ちの班では1人の人と30分くらいじっくり話していろんなことを聞けたのが すごく良かったと思います。さっき分析が甘かったとは言いましたが、ヒ アリングに関してはいろんな立場の方のお話を聞けて、自分たちの知りた いことや知らなかったこと、気づかなかったことを知るだけでなく、住民 の方の思いや気配を感じられました、それが、その後の展開にも悩みにも つながっていったと思っています。個人的な想いになりますが、私は一人 を1(サンプル)として統計的にあつかうことに対する違和感がすごくあ りました。だからこそ過疎地域を選んで、顔が見える範囲で進められてす ごく充実感がありました。まあそうは言っても、肝心のお茶を作ってる人 が忙しすぎて話が聞けなかったりで、残念はありました。 羽藤:一人を1にして分析して計画を立てるというのが近代の都市計画の 大きな特徴の一つだと思います。コンピュータなんて使わないで紙と鉛筆 だけで理論から考えていくような研究が僕は好きだけど、その反面、ビッ グデータの都市解析では10億レコードのデータがどんどん日々人の動き として蓄積され、それをコードを組んで解析していく。ただそういうマー ケティング的な計画だけでは届かないところもあります。場所によっては、 1人から話を聞いて合意をとって、次にもう一人の話を聞く。集落に何日 も泊まり込んで、地域のことを身体にしみこませて、考えるという方法を とることもあります。ドブ板土木と僕らは読んでいますが、自分たちなり の方法で、地域を考えることが必要だと思います。まただ、どちらにして も仮説が強すぎると、地域をみる目が曇ってしまうというのはあるかもし れません。 近松:基礎プロジェクトでは、調査計画書をつくって、細かくやったんだ けど、もうちょっとふんわりとやったほうがいいのかもしれない。でも、 それは班の性質にもよることなので一概には言えない。共通の体験をつく るのが現地調査ではないでしょうか。議論のひっかかりが重要だと思いま す。現地調査で気付きを共有していくのは重要だと感じています。 ▲1泊2日でフィールドワークを行い、チームに分かれて、まち歩きを行 いました。静岡の中心市街地をみんなであるいた後、海沿いの界隈から、 中間地域の小集落まで調査し、好きな場所について議論しました。

回遊性はどのようなものか、具体的な突っ込みまでいけなかった(梅澤) 個々の敷地のイメージはあっても、都市のイメージがなかったのは問題(近松)

羽藤:計画づくりはどうでしたか。 梅澤:僕たちの班は、清水の回遊性を高めるというコンセプトだったんで すが、回遊性というテーマに落ち着いた後、その回遊性とはどのようなも のなのか、具体的な突っ込みまでいけなかった。論理として補強されなかっ たということです。終始ふわっとしていたようで、定義したコンセプトを 深められれば自分なりに納得できたのではないかと思いますが、そこは反 省点です。 前田:私たちの班は、個々の提案が強く、根拠ははっきり言えないけれど、 感覚で違うというのが最後まであって、なんで違うのかが、ちゃんと言え ればよかったんですが、プランの選択肢として、それを最後まで残してい た。で最後にどうするかとなって、この政策案は本当にいると思う?と問 いかけて最後やっといらないとなった。自分の感覚で斧をふるったんだけ ど、最後まで自信のなさが付きまといました。班の中での反応がなかった からかもしれません。 近松:僕たちの班では、最初は静岡にはこういう問題があって、ここでこ うしよう、ああしようと解決していく方法を考えました。しかし、都市を 考えるにあたって、都市計画者の視点で考えたつもりでも、ぼんやりまち 歩きする時間は少なかった結果、街全体のイメージのようなもが掴めてお らず、それが最後まで問題として残ったのかもしれません。だから結局静 岡を回遊性という視点で見るのは正しいことなのか、歩くことの価値化は 大切だけど、そのコンセプトで本当にいいのかといったしこりのようなも のはありました。 静岡の雰囲気、まちとしての理解が自分たちの中で浅く、わかった気にな っているだけで、分析終えた時には完璧だろって勢いだったのですが、あ とから振り返ってみると、静岡はこんなところだなと思ったうえでやって いかないと、結局最終案に自信が持てないんじゃないかと思います。現地 に行った際に、そういうセンサーとして自分が働いていなかったんじゃな いかと今は思います。個々の敷地のイメージはあっても、都市のイメージ がない。ということかもしれません。 羽藤:都市設計を行う上で、多少ルーズであっても、みんながそうだと思 える皮膚感覚のあるコンセプトは大切だと思います。 ▲A3班は、フィールドワークではふらふらしていたんだけど、個々の地域 の足元で実現すべき「減災」にターゲットを絞り、縦と横の道路を生かし た「辻」の減災計画という着眼が評価されました。

今その土地に住んでいる人が住み続けられればいいのか(三木) ひとつの町をじっくり考え、他の人の意見を聞いたのは楽しかった(梅澤)

三木:私たちの班では、そもそもこの計画は誰のためのものなのかという ことが最後まで疑問として残りました。私たちは俵峰という土地を課題で選 んで、行ってみて惚れました。その土地の人とも関わりましたが、私たちに とっての土地の魅力は住民にとっての魅力とは限らない、土地のポテンシャ ルを引き出すことが住民に負担を強いるなど、人と土地がある意味相反する ようなところがあって。また、過疎地域をやるなら当然の問題として、その 地域を残すのかどうかという問いがあると思うんですけど、私たちはどうせ やるなら残そうぜということから入って、それが本当によかったのかどうか というのもあります。 何を大切に取り組むのか。どの視座でみるべきか。国、市、集落、民間、い ろんなプレイヤーがいて、誰が幸せになればいいか。茶畑という景観を残す べきなのか、今その土地に住んでいる人が住み続けられればいいのか、それ とも市や県の中心部の人の意見を重視すべきか、土地を捨てても良いのか、 格差と資本主義をどう考えるべきか。どこまでが仕方ない変化でどこからは 防がなきゃならない変化なのか、考えても考えてもわからなくて悩みました。 最後は結局、今あの土地に住んでいる人や住み続けたいと思っている人がちゃ んと住み続けられるように、かつそれほど公に負担を強いないように考えま した。 羽藤:スタイロを切ったり、図面を描くことだけに集中してしまうと、誰の ための空間なのか、誰が実行する計画なのか忘れがちになります。過疎が進 む集落のことを考えると、三木さんたちのような問題意識と向き合わざるを 得ないので、そいう意味ではいい敷地を選んだし、地域をマネジメントする んだという姿勢そのものが他の班にもいい影響を与えていたように思います。 梅澤:ひとつの町をじっくり考えて、他の人の意見を聞いたのは楽しかっ た。あとは、いろんな意見を出して、まとまることもあれば、まとまらな いこともあって、プランニングの長いプロセスがあるんだなと思います。 実際の都市計画がどうなっているのか気になっています。 羽藤:計画づくりの過程では、自身や他人を発見することがある気がします。 どんないい提案であったとしても、プライベートな感覚はそれだけだけでは、 パブリックな計画になりえません。立場や手続きを超えた何がないと、一定 の信頼を得ることは難しいように思います。何かというのは、実際の都市計 画に携わると見えてくるように思います。 ▲B1班は私たちの静岡、みんなの静岡というコンセプトは言えば当たり前 なものではあるのだけれど、その言葉から、ベビーカーと車椅子に着目し、 最後には正面切って都市計画を考えていた。

経験から定着にいたれていないのは反省点(近松) 主体的に積極的にかかわるか、それで差がでる(前田)

近松:本当にいい経験だった。こういうことに取り組んだのが初めてで、 ここまで情熱をかけて、最初は静岡は?って感じだったんですが、歩いて、 自分が出来ることを考えて、きつかったけど、よかったかと思います。ま ただ、経験から定着にいたれていないのは反省点として残っています。話 し合いの手順やまとめ方の復習があればいいかなと思う。議論してもよかっ たかもしれない。社会基盤は、静岡を考える中で、三木さんも言ったけど、 静岡市街地から広げる、地域との折り合い、商店街のことをどう考えるか。 でも世界はもっと広くて、静岡県、日本、その中で地域を考えていくこと の難しさも感じている。いろんなことを考えないといけない。だからといっ て、放棄するのでなくて、ちゃんと考えるのが社会基盤だと思っています。 羽藤:近松くんのいうように、広域の地理的な視点と、界隈レベルの風景 に対して異なるスケールを重ねあわせて計画を考えることは大事だと思い ます。 前田:自分が一生懸命、考えた経験はためになった。いかにして主体的に 積極的にかかわるか、それで差がでるのではないか。経験から学ぶのは強 いと思う。私は積極的に取り組んだつもりだけど、そうじゃない人はどう だったか。個人的にためになったんだけど。。社会基盤は、困ってる人は いるのはわかる、でも人間のために環境を改変してくことに対する嫌悪感 があるのも事実です。誰のためにやってるのかという疑問がある。人間社 会のことしか考えていないのが引っかかる。ダムも電車も人のため。不便 な人はいるけれど、人間だけのための計画ということが今もモヤモヤして います。 羽藤:あまりうまく言えませんが、蛍の畦道という活動を人口200人くらい の集落でやっていますが、それくらいの集落でも、蛍はちょっとしたこと でいなくなるんですよね。計画というのは自然と社会を間を調律するよう なものではないでしょうか。そして、その計画の前には、「理解する」と いう行為があるように思います。理解するという行為はとても深いもので す。一人で山を歩いていると、山の麓から山頂に至る迄、鬱蒼とした森が 続き、頂上近くで途切れてようやく空の青さを実感することが出来ること があります。寡黙な風景な何も象徴しないし、語りもしません。でもだか らこそ、どこか懐かしい。自分自身でさまざまな土地を、風景の中を歩く ことで、初めて感じられること、理解できることがあるように思います。 ▲B2班の街路の空間構成の読み込みやその捉え方はユニーク。地域全体の 動線表現にもセンスを感じた。たかが動線一本の引き方でも地域の全体像 の見え方は変わってくる。

社会基盤としてのプレゼンスとは何か?、都市をどうとらえるか?(陳) 知識がないと、扱えない防潮堤の高さは現在の計画高にしてしまう(前田)

三木:うちの班は選んだ敷地が一班だけ周縁地域だったから、同じ静岡の 都市計画といっても全然違うと感じていました。分析の計算プログラムも 自分たちに適用できない。ほかの班の話もわからない、前提も共有できない し質問もできない。自分たちだけ別のことをやったという感じを今ももって います。私は自分のやりたい地域をできたので満足感はありますが、今後は みんなで同じ地域をみて違う見方や違う切り方をぶつけ合ってみたいなと思 います。あとは、自分のスタンス、ツールを持ちたいです。まちを見て、理 解して、できるならよりよくしたいと思ってはいても、今はわからないこと やどう処理していいかわからないことが多すぎて、何に責任を感じればいい かもわからなくて知らずに何かを損ないそうですごくすごく怖いです。だか ら、気休めかもしれないけど少しでもツールを身につけてよりよい理解に向 かっていきながら、何か自分なりの関わり方を探っていきたいと思います。 陳:でも、都市を読むところからはじめて、一連考えられたのはよかった のではないでしょうか。この演習が今年から始まったんですが、TAは口だ けできなかった。うらやましいとおもいましたね、笑。 羽藤:全体通じてどうですか。 陳:こういうスタジオ型の科目の場合、最初に都市計画や都市設計がベー スの講義があって、取り組むだけですが、社会基盤としてのプレゼンスと は何か?、都市をどうとらえるか?とかが気になりました。社会基盤では、 講義の殆どがハード志向で、一番最初に堤防をやりたいというのがあって、 講義が進行すると、だんだん高度なハードな技術になって、直観的に扱い にくくなる。そういう中で社会基盤的な計画とは何かということを考えた いと思っている。たとえば、建築では建築を好きか嫌いかで、判断する。 それに対して、社会基盤は好き、嫌いではないですよね。価値判断ひとつ とってみても、そういう違いがある。パブリックを相手にしている場合、 バランスを考える。防災は平時と非常時、経済と命、二つの問題を考えら れたのはいい経験になったと思います。 羽藤:都市を計画するとき、ソフトをソフトだけ、その逆にハードをハー ドだけで精緻に考えることは難しくありませんが、都市の問題を都市の理 屈だけで積み上げて考えていてはナイーブな空間計画になってしまう。都 市を災害のようにあえて考えたこともない場面において考えてみることで、 初めて理解できることがあるということですかね。 前田:ハードとソフトでいえば、私は社会基盤にいても、まだハードはよ くわからない。考えることを避けている。無理やり考えないといけない場 合は、考えるんでしょうけど、構造物をつくることに距離感を感じるのは、 自分の理解がまだ達してないのがわかっているからです。ハードを扱おう と思えば、個々の構造物に対する専門的な知識が必要です。建物の設計図 や防潮堤を扱うなら津浪の高さの予想が正確なのかきちんと自分たちで計 算しなくてはいけないと思いますし、今の私にはその知識がないので、ハー ドを扱おうと思っても扱えず、それゆえソフトで対応させようとしてしま う。津波対策を考える場合、ハードの防潮堤を扱えないから、自分たちで は扱えない防潮堤の高さは現在の計画の高さのままにして、地域の住民が 協力して迅速に避難を誘導できるようなシステムを訓練などを行うことに よって築くといったソフトの提案にどうしてもなってしまうように感じて います。 羽藤:グループワークは計画づくりの大きな特徴だと思いますが、知識が ないまま個人的な感覚で計画をつくっていくには限界もあるということで しょうか。 ▲B3班は、計画とデザインに最も必要な「統合的な思考」で案をつくろう としていた数少ない班。センスのある街路デザインの提案、発見に満ちた 分析が行われていた。全体の論理に難ありだが、成長がみられたチーム。

都市プランが最後に現場でどう作られていくのかを考える(陳)

三木:ソフトだって達していないわけだけど、でも、わかりきっていなく ても許される、できる気がしてしまう、いろんな意見があるでいい、とい う雰囲気があるのではないかと思います。ハードに対しては自分の知識が 足りないということが(未熟な)私たちにでも分かる。しかしソフトは、 知識が足りなくても、全然分かっていなくても、なんとなく自分の実感や 普段の生活の延長上で提案はできてしまう。わかっていないことが明確で 全く手がでないハードに対して、ソフトは(提案内容が薄かろうが、現実 に沿ってなかろうが、非論理的であろうが)扱える気になってしまう。ま た、そんな提案内容でも、そんな意見・提案もできますね、といったよう にいろんな意見があるとして受け入れてもらえてしまう。だから本当はソ フトだって難しいんだろうけど、ソフトのわかってなさがわかりにくい分、 未熟でも、レベルの低い提案はできるし、それでやった気になれてしまう のが怖いなと思います。 羽藤:空間計画を考える際、ものをつくるにせよ、つくらないにせよ、地 面のことや、災害のこと、人々の流動や町での過ごし方、雨の多い地域で あれば降る雨のことを知らなければ、どんな計画もつくれないし、いい悪 いの判断も下せない。そのためには、強い専門性が必要になってきます。 基礎研究と強い専門性に裏打ちされた職能をもった人が、地域知と丁寧と 向き合うことで都市計画や空間計画を底堅いものにしくのではないでしょ うか。 陳:ものをつくるというのは、仕様を考えるということで、ソフトはそこ が曖昧で、まあ言っとけばいいだろといのはある。だからいい加減にでき るという感じ。でも法律だってソフトだし、プランがどうなるかだって本 当は、最後までいけば難しいはず。都市プランが最後にどう作られていく のかを考えるところが重要だとは思います。 羽藤:最後まで通して自分を投企しきんないと、わかんないことをがある よな。 ▲B4班。考えることが難しい集落の地域デザインに取組み、現実の70歳女 性の暮らしを通じて再表現されたプランを、タイムライン上に密度高く落 としんだ提案が、みんなから評価されていました。

自分の中で意見の違いを統合するという体験をしたい(近松)

三木:本当に、ソフトのわかりにくさ、わかってなさをわかりたいです。 近松:僕はハードに対してそろそろ向き合わないといけないと思っている。 ハードとソフトのつながりまで含めて考えたいと思っています。 羽藤:プランニングを支える制度設計を知らないと、本当の意味でのパブ リックな空間の設計やマネジメントはできない。でも近松君が言うように その逆もある。ハードからソフトまで、街路や広場から国土まで、自分の 学ぶ範囲が限定されないのが社会基盤のいいところかもしれません。 梅澤:僕は事象を1個に着目するのではなくて、全体を考えることもしな いといけないのかなと感じた。 羽藤:バラバラなものをバラバラに扱っていては、計画にならないから。 長い時間かけて出来上がってくる全体と部分をどう考えるかが大切だと思 います。 近松:ハードソフトどちらにおいても僕はひよっこなので、演習で、現場 の声を聴く、実際の技術を知るというのはいいのではないかとも思う。同 じことをやるのでも、いろいろとやり方が違うと思うのでその違いを聴い たうえで、自分たちが思うことを少人数で議論するのがいいのではないか。 いろんな意見のぶつかりあい、それを統合していくのがだいご味ではない でしょうか。それを負担の少ない形でアウトプットするのがベストかなと。 最終的には全体での議論もやりたいです。現場の細かな考え方をまず知っ てから、自分の中で意見の違いを統合するという経験をしたい。 羽藤:うん。というわけで、中園くんがいなくて残念でしたが(笑。また みんなで焼肉にでも行きましょう。みなさんありがとうございました。
東京大学工学部社会基盤学科基礎プロジェクト1