小林さん どういう経緯で土地所有のレビューを得られたとして、どういうことがしたいのか。 小林:今考えているのは、シミュレーションができればいい。どういった土地を好むのかという結果が得られる。どう行った場所の取引が活発になるということをシミュレーション。これが実証レベルだと道後のモデルであることは留意しなければいけなく、他の地では選好の違いはあるかもしれないが、ある程度他に使えるシミュレーションができたらいい。 浦田:自治体や商工会が入り込むポリシーは 小林:どう行った場所で公共事業をすることが限られた予算で効果を得られるのか。今だと現在のデータを使っているが、これからどこに投資すればいいということだけでなく、過去の政策の検証という意味でも、使えたらいい。 鈴木:RLの土地の所有形態を記述しているが、維持か取得か手放しかの三つが選択肢としてあるが、今持っている土地の細分化は起きないのか。 小林:この時期にはたまたまだが、対象とした地主には含まれていなかった。ただ、ナンバリング(地番)が変わるので、ある土地の所有面積が減って、ある新しい土地が取得されたという手続き。 取得と手放しの組み合わせであり、網羅性があるかどうかは怪しい。 増田:道後温泉からの距離としたのは、他の土地だったら他の変数になりうるか。 小林:公共施設と読み替えてもらっていい。道後温泉は歴史的経緯からも商業の中心。 増田:他の変数も試したか 小林:駅からの距離を入れることはできるが、駅からの距離と温泉からの距離には相関が生まれてしまう。そのため地理的な距離は一つだけ入れた。 村橋:逐次的なモデルを組んだときに、初期条件によって再現性はぶれやすいのでは。 小林:土地に関しては初期条件は後々に強く影響する。土地政策の研究がある。初期条件の置き方は留意が必要。交通と土地、消費者行動の違うところを詰めていこうと思う。 渡邉:異質性を考慮したモデルの方で,筆とパターンの同時選択となっていて,パターンというのは,ある土地Aの所有において,他のどういう土地と組み合わせで所有するか,という意味だと理解したのですが,この場合パターンが膨大になる気がするのですが,その点はどのように対応したのでしょうか? 小林:厳密な言い方でなくてすいません.筆を上位ネスト,所有形態を下位ネストとするCross Nested Logit モデルです.選択肢となるパターン(=どこの土地を持つか?という土地所有形態)は,2^(筆数) でほぼ無限になるので,この時も選択肢集合を実際の所有パターンを含むように個人毎にランダムサンプリングしてサブセットを作っています.当然と言えば当然なんですが,パラメータが一意に定まらなくて一番良い結果を今日は話しました.対応と言えるかわかりませんが,手続きは以上の通りです. 渡邉:土地所有とかだと,説明変数として考えられそうな値が(自分達の選択によって)時系列的に不確実に変化していくことがあり得るように思います(地価や隣接地の用途など).RLだと各時点で将来の説明変数の値を完全予見した上で,価値関数を計算していることになると思うのですが,この辺り,何か考えられたことなどありますでしょうか?(漠然とした質問ですみません) 小林:その問題があったので,完全予見を仮定しても(ギリギリ)無理がない説明変数と時間制約を置いています. 説明変数は,土地の面積と道後温泉本館からの距離という比較的変化に頑健な変数をあえて選んでいます.時間制約は,やや無理筋な感じはありますが30年先は予見できないが,5年までなら予見できるという仮定ですね.あと地価----この場合は「課税標準地価」なので売買の均衡点から得られる価格とは別物ですが----の更新が5年おきと当時は法律で定められていたのも時間制約の一つの理由です(変数には結局入れませんでした 選択肢集合のサンプリングは奥が深いです.補正項を入れることで一貫したパラメータが得られるとMcfadden(1978) は示しているんだけど,その補正項の計算に結局Full Choice Set が必要だったりするという. 土地に限らず居住地選択とか目的地選択とか,空間の離散選択問題は多かれ少なかれサンプリングの課題を抱えている,という認識です. EIJI HATO から全員に: 12:55 PM 小林さんのテーマは都市の土地利用ですが,超長期のモデル化を史料をデジタイズして取り組んでいるのが大きな特徴です.最近崩字の判別がAIで進んでいて,注目されている分野です. EIJI HATO から全員に: 01:06 PM 静学的なアプローチは,一時点の土地所有だけに着目して,場所ごとの利便性の違いを函数化して,土地マネジメントに結びつけていきますが,ここでは動学的なアプローチをとっています.動学的なアプローチというのは,土地の値段があがりそうだから,今は売らないと言った,再帰的な意思決定を時間軸上で,近代から現代にかけて分析しているということになります. EIJI HATO から全員に: 01:18 PM 公共プロジェクト(広場をつくるとか)をどこに打ち込めば,土地利用がどのように波及的に変化するのかがシミュレートできれば,インフラプロジェクトのストック効果の予測ができることになりますよね. ストック効果=地価があがって税収が増えるとか,新陳代謝が進んで新たなサービスが導入される.ジェントリフィケーションが進んでしまうみたいなことが予測できることになるよね. 土地の持ち方のパターンは時系列の中ではいろいろある(分割・合筆)ので,状態ベクトルを全列挙(逆行列)で価値観数を計算するか,サンプリングでありそうな(蓋然性の高い)土地所有履歴をMCMC=モンテカルロ木探索で列挙するなど,いろんな方法がありますね. 力村さん 鈴木:数値計算はどの程度活かしているのか 力村:あまり設計には活かせていないのが現状 浦田:以前だと神戸の元町商店街ろを広場にする時は、街路全体を歩く空間にして、歩行者を二次元的に動かすようにシミュレーションした。同じようなことができるはずだが、設計していると、ここは通り抜けたい、危ない、という実際の条件が出てきて、数理モデルだけではわからないこともあり、設計で統合する どこに手を加えるべきなのかを判断できるようにしたい。それを数理シミュレーションで捉える。もっと細かいところはまだどんなモデルがいいとかは芝原さんが考えて設計している。 近藤:広場を作ることで人がたまれるところを作るというのは交通量の問題は解決していないのでは? 力村:道後全体で回遊性を高めるという話はしたが、屋内、ギャラリー、場所制というか、目的を持っているが、広場は目的がなくてもよってくる機能があり、それを間に入れることで回遊性をあげる・交通量が多い傍に広場として治まれる空間を作るという目的がある。広場を作るだけでは交通量の問題は解決されないが、広場によって逃げれる場所を作り、交通流に対応する EIJI HATO から全員に: 01:26 PM 土地利用や地価のモデルは,従前ミクロ経済の価格理論に基づいて教科書的なモデルがありますが,近年は,小林さんの研究のようにGPSの回遊データや,Bluetooth,Wi-Fi,土地取引のデータが利用できるようになって,従前の巨視的な行動基礎理論を書き換えるような微視的な相互作用に切り込むような研究がではじめています. 研究室のプロジェクトは,(芝原さんが説明してくれているような)計画・設計プロジェクトに加えて,デマンド交通・自動走行シェアリングのOSを設計したり,小林さんと仲野さんがやってるような最適都市設計プロジェクトや博物館の最適設計プロジェクトのようなものもあります. EIJI HATO から全員に: 01:33 PM また,災害が起こると被災地調査が入ることがあります.18年と19年は豪雨災害調査に,呉・野村町・長野・福島入りして,M2,M1,B4などで取り組み,復興計画策定と防災広場の設計などにつなげています.災害調査では,ネットによる事前調査などにも取り組んでおり,初動の対応につなげることで,復興計画が過大にならないようなものにしたり,即時的な対応に結びつけようとしています(このあたりは望月くんの衛生画像研究につながってくることになると思います). 災害時は,とにかく,状況がわかなないので,断片的なデータを使ってサロゲートモデリングのように,物理モデルなしで,データだけ使って,交通の状態空間を推計するような方法も重要になるでしょう. EIJI HATO から全員に: 01:38 PM りきむらさんの設計は,道後温泉の上人坂下の広場の設計プロジェクトで,今年度竣工を目指しています.研究室でやった計画・設計プロジェクトには,道後温泉飛鳥乃湯泉や,花園町通りなどがありますが,交通シミュレーションや回遊シミュレーションによる設計評価→設計案のスタディ(模型・3D)⇄設計→設計条件の変更や見直し→素材や植栽の決定→施工という手順になります.力村さんの設計案は小広場ですが,これが今までの設計や,点在させるアートプロジェクトと連鎖して,回遊行動が変化し,まちの感じかたや,経済効果が変化し,土地利用も影響を受けて,新たな取引マッチングがうまれるといった系のモデリングとマネジメントを小林さんの研究とつなげていくようなことを想定しています. 行動モデルの説明変数は,今までだと,リンク距離や歩行時間,料金などが標準的でしたが,回遊モデルでは,歩道幅員や,段差,植栽,周辺のひとごみ,ファサードといった変数をどう取り込んでいくのかもこれからの課題になっていますし,行動も経路だけではなく,滞在時間や消費金額,たたずみや歩行速度など,かなり詳細な行動を再現できるような方向性と,先に述べたような土地利用の変容を重ねて分析していくようなことを考えています. 本質をついた!!! 街路整備にはつかった! 確かに. 鯉川筋の歩行空間の拡張で,回遊行動が広がるといったことは連続マルコフ配分と二次元流モデルで再現できていて,実際の計画と設計に適用されて,使われていますね. EIJI HATO から全員に: 01:55 PM JRの駅まちの計画だと,駐車・駐輪・広場・自由通路の配置と容量の最適設計のような問題,あるいは改札を電子的になしにしちゃうと,経済活動や家賃はどう変化するかとかそういうのがポイントになってきます.今使われていますか?というよりは,今やられていないことを,やれるようにしていくところに研究的な価値があるということじゃないですかね.遠投の距離次第ですが. 芝原さん 月田:大学がプロジェクトに参加する意味は? 芝原:行政だけだとただ作りやすいものになる.こうあるべきっていうのを示す. 羽藤:今までできてないことを研究開発するのが大学.事前復興は誰もやりたくないから,研究して,意味があることを示してそれを使っていくと,社会が変わっていく. 増橋:計画の中で計算を入れたらしいが,研究の中でモデルを作るときには,厳密性とかを重視して時間をかけると思うが,今回のプロジェクトでは,数理的に厳密ではなくても人間の判断で計算をいじることがあると思うのだが,それについてはどう思うか? 芝原:復興は時間制約が厳しい.長い時間をかければ精緻なものを作れるが,そこまで時間がないので最短経路でやっている.本来は研究を先に進めることが良いのだが,準備していない状態でやるなら時間制約を優先する.準備をしてなくても,とりあえず最短経路で出すみたいなやり方はあって,全くやらないよりはやった方が良い. 小川:前半の広場について.学びの壁の横の建物の意味は? 芝原:トイレがある建物とで場所を挟むことで,ある程度緊張感がある場所にする. 小川:そこではなくて,式の横に立っている家みたいなやつ. 芝原:既存のやつ. 小川:住居の近くに学びの壁は高くないか? 芝原:市の要望で住居に対して目隠しを作ってほしいという要望があった. 小川:目隠しのためにしたのか. 芝原:市の指定でフェンスの高さの指定がある.それを満たしながら目隠しする. 前田:事後復興的な計画は,災害の後に依頼があると思うが,事前復興は,どういう経緯があって計画しようという流れになるか? 芝原:東日本大震災の後に,南海トラフを警戒して各自治体がやっている.東大としては,愛媛大と共同して考えるってことで始まっている.南海トラフを全てカバーすると,対象敷地が多すぎる. 小島:事前復興は,起こっていないことに対策をするから,住民や行政の理解が得づらい.何か工夫したことはあるか? 芝原:計画を理解されづらいことはない.行政の人の方が地勢を理解しているので,高台への避難への理解はあった.ただ,被災前なので,日常的にどう使うかの理解を得るのが難しかった. 近藤:応プロで考えたが,日常使いされるように高台を作らなくてはならない.愛宕山を開発する計画があるが,道が使われなくなっているのを見て,日常的に使われるようにならないと,災害が起こったときにも逃げられない道になってしまうかもしれないと思い,災害が起こってどうするかを考えるだけではダメで,日常的に人が足を運ぶようにするにはどうすれば良いかを考えるようにしていた. 羽藤:そこは難しいが,結構重要. 近藤:集落の方にも現地調査で行ったが,そっちは標高が高いところまでの導線がはっきりしていて,逃げるイメージがしやすいが,市街地は,低地に人が密集していて,愛宕山も,分かりにくいし歩きにくかった.集落の方を見て,より使われるようにしたいなと思った. 羽藤:災害の時だけを考えると高コスト.災害時と日常っていうのを考えて計画に落とし込まなくてはならない.避難は数理的なものが乗りやすいが,回遊は,設計の細かいところに課題が残っている感じがする. 浦田:マニュアルになって教科書に載っているものは行政やコンサルはできるが,それ以上に考えたいことが複雑化していて,それに向けて研究開発しているのが学生.芝原さんは現場と理論を合わせていくことを考えている.卒論修論はあくまで研究ではあるが,社会実装するときに,どこまで理論やロジックで決定に迫れるかを身につけるために設計したり,研究したり,価値を考えたりすることを考えてほしい. EIJI HATO から全員に: 02:03 PM 今の都市の形は,鉄道駅ー回遊,温泉宿ー温泉回遊という行動原理に最適化していますが,新しい技術が入ってくると,その形は変化していくことになります.新しい都市の変化していく形(配置・密度・流動)を(数理的に)予見したり,予見するところから,複数の目的函数(何を最大化したいか,商店なら売り上げだったり,ホテルなら満足度,自治体なら何を最大化したいか)をストックホルダー・ステークホルダーに対して設定して,設計につかっていくと,道後は中心ばかりに投資してきたけど,外側に質の高い広場をつくれば,回遊範囲が広がり周辺の街を生かすことができる,であるとか,災害を考えると駅まちの広場の配置は外側にあった方がいいとか,広場のネットワーク的なアクセス条件をこう変えるといいみたいなことを明らかにすることができます. EIJI HATO から全員に: 02:11 PM 避難モデルを使った都市計画の避難時間評価は増田くんや近藤さんたちが取り組んでいる研究ですが,出発時刻を早める,車と歩行避難の比率,ネットワーク整備の優先順位,高台避難施設の容量設定などが重要な変数になるでしょう. 設計や現場での問題を研究に取り込めると,いい研究になることが多い. 抽象度の高い問題でリサーチクエッションを設定するとありきたりなものになりがちではある. B4とM1は質問してね. テーマは難しいんだよね. 手もうごかいと,羊頭狗肉になっちゃうし. 都市と交通だと,現場に近いテーマにいい方法論のアイデアが重なるといい研究になるように思います.まこれは海岸工学なんかでも同じところがあって,数理モデルだけで流体力学でサロゲートモデルで駆動型にして研究していくよりも,やっぱりL1・L2のような設計上の問題に対して,理論を考えてくと畳み込み函数の数理的性質のいいものが見つかったりするみたいな話はあるので,芝原さんとかりきむらさんがやってることに感心をもってもらえたらと思います.