統計的社会ネットワーク

1.個人関係のモデル化

対の相互化

ダイアッド間の結合の測定のためのモデルで、相互対が形成される確率について、条件付き確率などを用いて求めた。

三者関係の推移性

ダイグラフにおけるトライアッド・パターンには16種類あり、二者関係に比べて、複雑性が増す。それぞれの分布の統計量を求め、この統計的な有意性を検定する。これは、統計的社会ネットワーク・モデリングの原型となったが、個人の集団のモデル化には適しているが、組織全体の分析には対応していない。


2.ネットワークのモデル化

マルコフ連鎖仮定モデル

時間軸を導入し、二項結合関係の遷移確率はすべて事前の状態に依存している(マルコフ連鎖)ことと、ひとつの結合の変化しか同時には与えられないことを仮定した上で、時刻tでの特性に依存する遷移確率を定式化している。

これを用いたモデルに相互性モデルと人気性モデルがある。相互性モデルは相互対・非対象対・非結合対の総数を推定する。人気性モデルはあるアクターの結合の受けやすさを推定する。ただ、マルコフ過程性の仮定は非常に厳しく、パラメータ推定は困難である。

p1モデル

社会諸関係の相互化傾向、差別的受信傾向をコントロールする偏向パラメータを指数族として表現し、マルコフ性などの過程をせずに、ログリニアモデルを応用したのが、p1モデルである。

p1モデルは相互性、全結合数、出次数、入次数のための偏向パラメータを設定している。ただ、結合XijとXjiは独立的であると仮定が置かれていて、推移性や派閥化は表現できない。

p*モデル

p*(ピースター)モデルは、マルコフ・ランダム・グラフに依拠した指数族のモデルで、ダイアッド間の独立性を前提としないモデルである。

このモデルは、二者の関係、三者の関係、次数、下位集団効果についてモデル化(独立変数を線形に表現)している。ただ、正規化の際に問題が生じ、計算が困難なので、ロジット・モデルを適用する。

それをロジットp*モデルという。また、p*モデルはij結合について考えるとき、ij結合以外の部分の補集合の条件つき確率としてij結合のリンクのあるなしを説明することにより、p*モデルは結合の全コレクションについての確率を求めることができる。


この分野のモデルの発展はほぼ完成といえ、実用的な段階にきているが、応用研究はイリノイ大学の一部のみでしか行われていなく、課題が残っている。

付録:英単語メモ

・マルコフグラフ Markov graph

・準尤度推定法 pseudol likelihood estimation


もっと知りたい方は

ゲーム理論合宿で利用したパワーポイントファイルがダウンロードできます。

sna08.ppt

さらに勉強したい方は教科書を買うべし。ただし、誤植が見受けられるので注意。


もしくは『Models And Methods In Social Network Analysis』。

もしくは学術論文 『Logit models and logistic regressions for social networks』(Stanley Wasserman,Philippa Pattison,1996 PSYCHOMETRIKA vol.61 No.3 pp401-425)などをあたってください。

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