ポジションとロール

1.ポジション=ロールのモデル化

写像

ロールを確定させるためには元の複雑な関係データを数学的に、簡単に写す必要があり、この関数を写像という。

定義:関数f:P→P'は集合Pの要素aを集合P'のイメージ的な要素f(a)に写像する関数である。

また、準同型写像とは、要素間の重要な関係構造を保存するように、元の関係を縮約して得る写像である。準同型写像の中で最も利用されるものは全準同型写像である。これは、ブロック間の関係を表すように経験的にグラフを縮減する写像である。

同値

全準同型写像自体はルーズな写像であり、そこに次のロールの同値性の概念を入れることで、厳密性を加えうる。

※以下Rは関係

(1)正則同値性

aとbが正則同値であるとは、a,b,c∈Pに対して、

aRcが、bRdでd≡cであるようなdが存在し、

cRaが、dRbでd≡cであるdが存在する

ことを含んでいるときである。

(2)構造同値性

aとbが構造的に同値であるとは、a,b,c∈Pに対して、

aRbであるときのみにbRa、

aRcであるときのみにbRc、

cRaであるときのみcRb、

aRaであるときのみaRb、

が成り立つときである。つまり、同じアクターに全く同じに結合するアクターは構造同値である。

(3)自己同型同値性

自己同型写像とは、反射的な関係を含んだ上で同値性を考える、限定の弱い構造同値性である。

aとbが自己同型同値であるとは、

aRbであるときにのみbRa、

aRcであるときのみbRc、

cRaであるときのみcRb、

が成り立つときである。つまり、「グラフのノードのラベルを換えた時にそれらがお互いに区別できないようなものを同値と考える」と言い換えられる。


なお、制約は構造同値性が一番強く、正則同値性が一番弱い(他の同値を内包している)。構造同値性を計算する場合は、隣接行列から点間のユークリッド距離またはピアソンの積率相関係数を用いる。


2.ブロックモデリング

分割

ブロックモデルとは隣接行列Aをもつネットワークをb個のポジションB1,B2,‥,Bbに分割したもので、このときアクターiをポジションBkに写像するf(i)が作用し、これはイメージ行列に写像される。

ブロックとは分割された1つ1つのポジションを表す「かたまり」であり、またロール関係を表すイメージ行列の成分でもある。重要な点は、同じポジションに分割されたアクターは構造的に同値とみなされることである。

イメージ行列Bは、通常二項関係で表され、bij=1のブロックを一ブロック、bij=0のブロックを零ブロックとよぶ。


ブロック間の関係に二項値を与える基準を、ブロック内のアクター間の密度に応じて定める必要がある。この基準には、完全フィット基準、零ブロック・フィット基準、一ブロック・フィット基準、α密度基準の4種がある。

手順

演繹的方法

あらかじめブロック化するアクターを確定さえた上でフィッティングを行う。個人の年齢層やジェンダー、産業のセクター、団体の活動分野などによってブロック化する場合に用いる。

帰納的方法

事前にブロック化すべき基準を設定しないで、構造同値を求めるアルゴリズムを用いてブロックを事後的に求める方法。

また、結合のタイプのテンプレートを用意しておき、そのテンプレートに最適のあてはめをもつような結合のタイプを確定していき、ブロックモデル化する方法もある。


3.関係の関係を分析する

合成関係

多重関係とは、同じ集合のアクターに対して定義される複数の関係のことである。複数の関係を明らかにするには合成関係を作りだす必要があり、その定義は、

「集合X上における二つの関係RとTについて、(i,k)∈Rかつ(k,j)∈Tであるi,j,k∈Xが存在するときにのみ(i,j)∈RTであるといえ、このときRTは合成関係とよばれる」である。RTやRRTなど、長さに応じて、新しい合成関係を求めることができる。

半順序半群

合成関係の集合は数学的には半順序半群という関係代数で定義される。半順序関係とは、反射的で、半対称的、推移的な関係のことであり、半群とは「結合律によって定義される集合とその二項演算のシステム」である。

関係ボックス

関係ボックスはネットワークの成員の数をg、関係の数をrとしたとき,g×g×rの3次元の直方体構造で表される。関係ボックスから個人iとjの結合関係(関係ベクトル)、iとjの間に存在する原初関係(ロール関係)、一個人が他の個人ともつロール関係の行列(関係プレーン)、個人iのロール関係の集合(ロール・セット)を見ることができる。

関係ボックスは、アクターから見た関係性がモデル化されていて便利であり、また同じロール・セットをもつアクター同士を同値とするローカル・ロール同値性を提出する。

付録:英単語メモ

・写像 mapping

・全準同型写像 full homomorphism

・縮減グラフ reduced graph

・半順序半群 partially ordered semigroup


もっと知りたい方は

ゲーム理論合宿で利用したパワーポイントファイルがダウンロードできます。

sna05.ppt

さらに勉強したい方は教科書を買うべし。ただし、誤植が見受けられるので注意。

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