ザンビアのある工場の1部門に15人の工員がいた。工員はそれぞれ役職・上下関係があり、歳も違う。ある日、二人の工員の間でいさかいが起こった、そのいさかいに横やりを入れるものもいたが、上司が収め、取り繕った。その日の昼休みに事情を聞いていると、はじめに突っかけた方が皆から信頼されており、指示する者が多く、結局弱い側はやめることになってしまった。
この一連のいさかいについて、職場内の人間関係のネットワークをみると、批難された人物のもつネットワークは弱く、逆に有力な人物とのつながりのある工員は批難されていなかったことがわかる。このように職場の規範、年齢の老若といったことでは十分な説明ができないことでも、社会ネットワークを分析することによって、説明することができる。
社会ネットワーク分析の捉える社会構造とは、実質的に関係した社会単位(人間、集団、組織)の間に定義される社会単位の集合とその関係である。
社会構造を捉える上で「社会の相」(マクロな社会観)と「個人の相」(ミクロな社会観)というふたつの見方がある。さらに、「社会の相」から「個人の相」をみる、「個人の相」から「社会の相」をみる、という二つと合わせて、全部で4種の社会構造の捉え方がある。
観察可能な行為と社会関係へ注目し、アクター間の相互関係を考察する。対象はただ単に個人の集合となる。
個人の行為の成員を「社会の形態」に求めている。個人、個人の行為も「社会の相」によるものと捉えられる。
「社会の相」から「個人の相」をみる。社会構造を社会システムの組織的な特性として捉えていて、社会的なポジションの相互作用からネットワークを捉える
「個人の相」から「社会の相」をみる。社会を個人の規則・資源として外在しているのみのものと捉えている。ただ、実際に「個人の相」の先に社会の構造を捉えることは難しい。
社会構造はアクターの集合、そのアクター間の結合関係、それらを記述するグラフモデルによって、社会ネットワークにおいて構成される。現実社会をモデル化するためには、ここにいくつかの拡張が必要となる。
こういった社会の複雑性を表現するためには、結合の強度の数値化、複数の種類の関係の取扱い、時間軸の導入、組織をアクターに加えること、個人の共通属性などを考慮して、モデルを拡張することが考えられる。
「心的相互作用」に限定せず、あらゆる相互作用による社会的諸関係のパターンにより、人間行動にアプローチする。
分析の焦点は、アクター間の社会的諸関係であり、内的な属性による分類ではない。
集団所属関係の網の目を前提に、それらの関係がどのようにアクターの行動に影響を与えることが考察の対象の中心である。
社会構造はネットワークのネットワークといえ、分割不能である。また、アクター・クラスター・ネットワークと改造的な構造をもっており、上下の階層との関係性が考察される。
独立的な個別単位を要求する主流的な統計技法を補う社会構造のパターン化した関係的性質を扱う。
「構造」を具体的なイベント、その発生・過程のメカニズムと連結させて、明らかにすることを目的とする。社会ネットワーク分析の対象となるサンプルは、そもそも事例的なものであり、代表的なサンプルではない。
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