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概要

都市生活学・ネットワーク行動学研究室では2008年10月6日(月)に、社会ネットワークゼミ2008と題し、金光淳著『社会ネットワーク分析の基礎~社会的関係資本論にむけて~』(勁草書房, 2003年)の輪読会を行いました。こちらでは当日の内容とその後のまとめについてご報告しています。


社会ネットワークゼミ@神田

当日の時間割

10月6日(MON)

09:00-09:50[概要]社会ネットワークを導入する
09:50-10:40[歴史]社会ネットワーク分析はどこからきたのか
10:40-11:30[表現]社会ネットワーク分析にはどんな数学が必要か
11:30-12:20[社会構造]社会構造概念はどのように豊饒化されるか
12:20-13:20お昼休憩
13:20-14:10[地位・役割]ポジションとロール
14:10-15:00[階層構造]中心性
15:00-15:50[組織の表現]アフィリエーション・ネットワーク
15:50-16:40[モデル]統計的社会ネットワーク・モデル

■社会ネットワーク分析への招待

はじめに

社会ネットワーク分析が着目するのは、社会的なオブジェクトとオブジェクトの間に存在する「関係」であり、システムとしての社会構造である。 社会単位の集合としての社会構造は、(1)ネットワークの構成員としてのアクター、(2)そのアクターの間に定義される結合関係、(3)数学的に記述し、分析するためのグラフモデルの3つから定義される。社会ネットワーク分析は各アクター間の結合関係とその強度に着目することで、社会構造を捉えていこうとするものである。


社会構造の捉え方

社会ネットワーク分析の対象となる社会の見方には4つの概念がある。ひとつは、ミクロな社会観である。これは観察可能な行為と社会関係・個人の相互作用に注目する。二つ目は、マクロな社会観である。これは、個人の行為は各個人の「うちなるもの」の影響でなく、「社会の形態」によるものだという考え方である。三つ目は社会的ポジションといって、マクロな社会観からミクロな社会観を眺めるもので、社会的諸関係(ポジション)の総体として人間を捉えている。最後は、行為を制御する社会といって、社会的ポジションと逆にミクロな社会観からマクロな社会観を眺めるもので、各個人の行為野先に外在している規則・資源を見出し、社会として捉えようという考え方である。

また、社会ネットワーク分析は、アクターの内的な属性よりも社会的な関係を重視し、その結合パターン・性質を問題にし、そういった社会的なイベントの発生や過程のメカニズムを明らかにしていくことになる。

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社会ネットワーク分析の発展

社会ネットワーク分析の源流として、グループ・ダイナミクスがあり、さらにそれがグラフ理論により数学的な基礎付けがなされた。また、クリークについての研究が進み、理論は精緻化していく。 70年代にはグラフ理論に代わり、ネットワークの厳密な関係構造を表現するブロックモデルが誕生し、また50年代頃に盛んであった支配構造の研究と結びつき、社会ネットワーク分析の有効性が認められるようになった。その後、社会交換理論・合理的選択理論と結びつき、現在の展開にいたっている。

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社会ネットワークの表現

社会ネットワークを表現するための根本的なツールとして、グラフがある。グラフは、点と辺の集合である。点と点が辺によってつながっていることを結合しているといい、点同士の結合があるときを1、ないときを0で示した行列式を隣接行列という。そのグラフの辺の数を各点からすべての他の点に辺が存在するときの辺の数で割ったものを、そのグラフの密度とする。また、グラフの辺が方向をもったものをダイグラフという。ダイグラフの場合は、連結度・推移性といった指標がある。また辺にあらゆる値の種類を与えたものを重みつきグラフといい、値により結び付きの強さを表すことができる。

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■社会構造概念の彫琢

社会構造

社会構造をどうみるか、どうモデル化するかには3つの型が考えられる。ひとつは、トップダウン型で、社会ネットワークを構造的に下位システムを分割して説明する。二つ目は、ボトムアップ型で、個人が社会ネットワークの中でどこに位置づけられるかを中心性などの統計量から説明していく。三つ目は、リンケージ型は個人の相と社会の相の連結性を明らかにしていくときに用いる。

社会構造のモデリングの一つとして、社会ネットワーク内の凝集的な部分集合=クリークを同定するという手法がある。

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地位・役割

社会ネットワーク分析において、アクターの間に見いだされる関係のパターンである「ロール」と、ネットワークにおいて類似性をもったアクターの集合である「ポジション」は重要な概念である。

ポジションとロールを確定するために、元の複雑な関係を簡約的に表現する写像を用い、結合のパターンを比較し、ロール同値性を定義している。また、アクターをポジションに帰属させるには、ブロックモデルを用いる。ブロック内の密度を考慮してブロックを分割していく帰納的方法と、前もってブロック化するアクターを決めておく演繹的方法とがある。

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階層構造

ネットワークの中のアクターの中心性を分析することは、ネットワーク内のパワー概念と関連性が強く、重要である。また、ポジション・ロールの概念に比べて、中心の度合いが尺度化されており、数学的で実践志向といえる。

中心概念を示すのにいくつものモデルが考えられてきている。基本となるのは、そのアクターのもつリンクの数、他のアクターとの距離、他のアクター同士を結んでいる数といった尺度である。また、応用的にはリンクのあるアクターの地位や伝搬してくる情報量を考慮する尺度もある。近年は、集団を形成するアクターがどの程度集団へ偏向しているかを示す尺度も考えられている。

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個人と組織の関係

個人は組織に所属することで、様々な可能性を付与されることもあれば、行為が制約されることもある。個人と組織の関係をアフィリエーション・ネットワークで示すことで、ミクロ‐マクロのリンクを表現することができ、個人と集団や組織の二重性、相互規定性のメカニズムを分析することが可能になる。

個人と組織のハイパーグラフとその操作により、組織間の個人の重複や個人間の組織の重複、組織・個人の中心性、近接性を示すことができる。

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統計モデル

社会ネットワークは社会単位の結合従属性を仮定しており、データ単位の独立性を仮定する統計的なモデル化とは相容れないものと思われてきたが、近年マルコフ・グラフの導入によって、統計的社会ネットワーク・モデリングは実用的なものになりつつある。

統計的社会ネットワーク・モデリングの進歩の過程をおっていくと、Katz and Powell(1955)などの結合の相互化傾向のモデル化、Holland and Leinardt(1970)などの三者関係の出現頻度のモデル化がある。これらは個別の集団モデル化であり、ネットワーク全体のモデル化とはなっていない。ネットワーク全体のモデル化については、マルコフ連鎖を仮定し、時間軸を導入した離散確率モデル(Wasseman,1977)、結合関係の傾向などをパラメータ化して推定するp1モデル(Holland and Leinard,1981)、p1モデルを改変し、ネットワーク内の他のすべてのネットワークについての条件づき確率として推定するp*モデル(Frank and Strauss, 1986)が定着し、現在に至っている。

もう少し詳しく知りたい場合は総計的社会ネットワークの詳細ページ


参考文献リスト

社会ネットワーク分析のさらなる理解のための参考文献一覧。リンク先はamazonです。