発表書籍: Yossi Sheffi: URBAN TRANSPORTATION NETWORKS, Prentice Hall, 2-132, October, 1985. 6章 Urban Equilibrium with variable demand (需要変動型利用者均衡) ■需要変動型とは? 普通の利用者均衡配分はOD交通量が既知で一定だった。 需要変動型はOD交通量自体が変わるような問題。混雑によりOD交通量が変化す るようなことがあり得る。 OD間の所要時間に応じた需要関数が導入される。 ■需要関数 需要関数の条件は、所要時間uに関して単調減少。式の形は全ODで同じ。 ■最小化問題 目的関数は、(需要固定の場合の総旅行時間)+(需要変動に伴う式)で表さ れる。 未定乗数を導入して、ラクランジュ関数を定義する。経路交通量fとOD交通量q の関係式が目的関数に組み込まれることがポイント。 ・ラグランジュの未定乗数をuとおいた理由は? 偏微分したときに、fとqの関係式が出るようにしたい。 ■解法アルゴリズム 目的関数の最小化に、需要の上限を制約条件として求める。 fの関数となる目的関数を解く。凸結合により解く。 ■ネットワーク表現による解法(Zero-Cost Overflow Formulation) 変動交通量qを導入せずに、ネットワークの工夫で解くことができる。 仮想の目的地r'をおき、リンクコスト0の仮想リンクと、実リンクによる需要 固定型リンクの間での配分で需要の変動を表現するというアイデア。 ■Excess-Demand Formulation 交通量qの問題を超過需要eの問題に置き換える。rs間に仮想リンクを設け、超 過需要eの式でqの上限値を固定需要とみなして配分 ■交通手段選択モデル 公共交通のリンクを加えると、仮想リンクによる変動需要型配分と同じように 見立てられる。ロジットモデルで選択が行われるとすると、選択確率式を需要 関数をみなすことができる。 ・θの大小とは θ>0として、θが大きいと確定的、θが小さいとランダムな選択になる。高齢 者のような人、混乱している状況ではθが小さくなる。 □質疑 ・実際の行動ではそれほどODは変動しないと思うが。 目的地の選択のようなことまでは考えられていない。均衡しているという時間 をどれくらいで考えるか。 ・マルチモーダルな配分ではトータルな交通量を固定としていた。その全体の 交通量をさらに変動させる場合、その外側のネットワークの工夫でできるのか? 公共交通もパフォーマンス関数を設定して、溢れた分が流れるハイパーパスの ような形で表せば表せるのではないか。公共交通にも遅延などはある。 ・需要は結局変動しているのか 需要関数に従って交通量が変わる。ODの交通量が混んでいるところは減るし、 空くようになれば増える。 ・均衡問題を情報をどう利用して与えていくのか カーナビなどでの提供もある。情報の与え方を状況に応じて変えれば変わる。 避難だと状況が見える町と見えない町だと違うことや、θがリンクによって異 なるなどはある。所要時間のフィードバックの精度によっても均衡達成の状況 が違うのでモニタリングの話もある。 ・混雑の社会的相互作用を入れるようなやり方と、配分で需要を変動させるや り方はどっちが良いということはあるのか。 混雑の影響は入れられる。 ・実際は変動がネットワークだけでない要因であったり、時間単位で起こって いるのではないか 12時間や24時間で集計したデータを用いて、その単位で配分を行う。変動とい っても、今回扱う変動は時間単位の変動でなく、需要の量が混雑に応じて変化 するということ。例えばトンネルで繋がると隣町と行き来が活発になるなど。 ・組み合わせ最適を解くということ 若林・今泉のような問題は組み合わせ最適のような捉え方をすると良い。21世 紀の交通計画は、組み合わせの最適が観測できるようになっていて、その理解 が必要。 □次回までの課題 ・制約無しの凸結合問題の値域がどうなるかを考える ・ラグランジュの未定乗数法(児玉)