【今泉 :7〜9章】 今回扱うのはOD固定で、リンク間相互作用を考慮した配分モデルを扱う ■■トリップ分布・配分モデル 出発旅行者数は固定、目的地は複数。所要時間と魅力度に応じた比率により、 出発人数を比例配分するようなやり方が考えられる。最適化問題の定式化は旅 行時間の総和と旅行者の受ける魅力の総和の足し合わせ。制約条件は1)経路交 通量は0以上、2)経路交通量の和が出発旅行者数。 ■解き方 ラグランジュの未定乗数法で解く。均衡解では、所要時間と魅力度の和を旅行 抵抗と捉えることができ、交通量が流れる経路では旅行抵抗はμ以上になって いると考察できる。 ■ネットワーク表現の工夫 複数目的地から、ダミーリンクと1つのダミーノードで1ODの配分と見立てる。 ■目的地需要関数を用いた定式化 OD間フロー数を目的地の需要関数を用いて表現する。ラグランジュ関数は、旅 行時間の総和、目的地需要関数、経路フローの非負制約式の足し合わせ。 ・経路フローが非負なのはわかるが、0になりえないのはどこから?(伊藤) 目的関数の定義から、経路フローqは0以上でなければ定義できないところから 来ている。 ・目的地需要関数を導入することで何がしたいのか?定式化のし直し?(浦田) 最初は旅行時間に応じて配分、目的地需要関数は需要変動で表す。確率的に配 分を行いたいということか。もとの定数で配分するという部分を、モデルで根 拠を与えたということもありそう。仮想リンクとノードを加えたのは、目的地 選択を経路選択問題に落としたかったからだろう。 ■■両側制約のモデル 出発フロー固定、到着フロー固定、経路フローがわからない。都市間移動を考 えると経路フローは出発・到着地の人数だけでなく旅行時間にも影響を受け る。パスフローを旅行時間の関数で表した時、定数の値や関数形はどう決まっ ているのか。 ・両側固定の意味は? 住宅地と商業地のような例を考えると商業地の魅力を反映した配分が必要とい う点で重要。またODの到着側の方が駅乗降者や来街者数など観測が容易という のもあるか。 ■解き方 各ノードごとに出発フロー、到着フローが固定のもと、最も発生しやすいフ ローパターンを考える。(出発地ごとの発生フロー数の階乗の積)/(OD間パ スフロー数の階乗の積)の最大化問題を解くと、エントロピーモデルが出てく る。旅行時間の総和とエントロピーモデルの合計を最適化問題とすれば、片側 制約のときと同様にラグランジュの未定乗数法を用いて解くことができる。 ■■リンク間に相互作用がある場合の均衡問題 混雑時のリンク間の依存関係を考慮する。 ■影響が対称な2リンク 旅行時間を2つのリンクフローの関数とする。定式化した問題が正しいこと を、対称条件を用いて証明する。 フロー保存則を制約条件としてラグランジュの未定乗数法を解く。目的関数 z(x)をリンクフローで偏微分したとき、対称条件のもとでリンク旅行時間とな り、定式化した問題はリンク間相互作用を考慮した均衡配分問題として解くこ とができる。 ■ヘッセ行列 初回のゼミで、リンク間に影響がない場合、均衡配分問題のヘッセ行列行列は 対角行列になると説明した。リンク間に相互作用があるときは、1)旅行時間 はリンクフロー数に応じて増加、2)その影響は自分のリンクが最も大きいと いう仮定を置くことで正定値であることが証明できる。 ■非対称なコスト関数をもつ場合 等価な数学的問題から解を得ることができない。今までの均衡配分問題を繰り 返し解くことで、収束値を求める。具体的にはいくつかのリンクフローに影響 するコスト関数を定義し、総旅行時間を最小化させるリンクフローを対角化問 題を解くことで求める。対角化問題を解く→収束判定を繰り返し、最終的な値 を算出する。 ■■スーパーネット-移動選択統合モデル ■公共交通ネットワークを用いた手段分担 ダミーリンク・ノードを設定して自動車/公共交通ネットワークを分け、ロ ジット型の分担関数を用いてフローを表す。バスの交通量が自動車の旅行時間 に与える影響についても非対称の対角化問題を解くことで導ける。 ■手段分担/分布/配分 統合モデル これまで独立に扱ってきた手段分担、分布、配分モデルを同時に扱う。片側制 約(発生フロー固定)。 7章のダミーリンクと1つのダミーノードで1ODの配分と見立てるものに、6章と 同様に公共交通リンクを追加する。最適化問題は通常リンクの総旅行時間と公 共交通旅行時間、ダミーリンク旅行時間の総和をラグランジュの未定乗数法で 解く。 制約式に対する未定乗数が1ODと見立てた間の最小旅行時間となる。 ■需要変動型 さらに需要変動型の手段分担に対しても、需要関数を入れたの均衡配分問題と して、超過需要法を用いて解くことができる。 ・統合モデルは両側制約では解けないのか? ・この統合モデルと四段階推定法の違いは何か? :四段階推定法では各段階がバラバラに計算され、インプットが毎回違うのに 対してこのスーパーネットモデルを使えば分担/分布/配分を一気にだせる。た だ、首都圏などでやろうとすると計算負荷がものすごく大きく大変であった り、パラメータを推定しづらく外生的に与えざるを得ないという欠点もある。