20240509 #4 三上発表 "Potential Games with Continuous Player Sets" 議事録担当:白井 [5.Efficiency '利己的な行動は社会的に望ましいプレイをもたらす'(スライドp.30)に関して] 大山:政策を考えるときに面白い。等弾力性といった強い仮定に基づく帰結だが、この状態を政策によって実現することで、ポテンシャル関数の枠組みによって使えるようになる、ということか。 三上:そう。実際に論文ではイントロダクションで所得移転に言及している、仮説的補償原理とも通ずるところがある。 羽藤:混雑の文脈で言うと、例えば普通乗用車とトラックとで時間価値が異なり、マーケットでは弾力性が異なる。制度設計によって等弾力性を保証することによってポテンシャル関数として記述されうる。どのような条件だったらポテンシャル関数として扱えるかを、条件として落とし込んでいるのがこの論文のすごさ。 [研究室プロジェクトの各地域に関しての議論] 浪江チーム 小川:浜通りにおける複数の拠点と拠点間交通の整備について考えた。通常は、利用者の数に対して拠点整備の投資は単調増加すると考えられ、維持コストも利用者数に比例して安定し、ポテンシャルゲームが成り立つと考えられる。交通網整備により拠点間の交通利便性を変化させると、投資の微分を抑えながら利用者の利得を上げるような状況を考えられるのでは。 羽藤:ネットワーク配分上のコスト関数に、ネットワーク整備を入れ込む、ユーザー同士のゲームではなくエリアマネジメントを取り込むことによって複数プレーヤーのポテンシャルゲームで解く、ということになり面白い。もとは、そもそもの利用の分布を考えて欲しかった。 加藤:浪江が抱える問題である、疎な地域でのつながりの問題に結び付けられているのが面白かった。 胡坐チーム 内谷:バスタの整備による車から公共交通利用への転換について考えた。車の混雑が問題となっており、バス利用者の増加により混雑が解消されうるというシナリオが提示されてはいるが、依然として車を選ぶ人が多いというギャップがある。ポテンシャルゲームの枠組みだと、効率的に解かれるはずの状況が、何かしらの原因によってそうなっていない。これにバスタによって何ができるかを考えると、冗長なバス網をバスタによって切り替えてネットワークをわかりやすくする、日常拠点を公共交通を接続させ利便性を向上させる、などがある。 大山:交通手段間の混雑ゲームでは、固定項が大きすぎるという問題が生じることがある。バスの固定項を改善することでポテンシャルを高められるようにできる。 羽藤:目的地選択、出発地選択といった問題をポテンシャルゲームで考えられる。 付知チーム Laureen:需要が疎であり、リソースが限られていて、アクティビティパターンが多様である付知のケースでは、多様なOD・スケジュール・時間への選好を持つ人々の需要を束ね効率的に輸送することが重要となる。そのためには、人々にインセンティブを付与する必要があり、情報提供・予約システムなどを通じて個々の選択にゲーム性を持たせ、ポテンシャルゲームで解くことが考えられる。 羽藤:付知のケースは、'非混雑'の状況を考えることになり面白い。ダイナミクなre-schedule問題が鍵。 白井:情報提供のアイデアにはなにがあるか?混雑を避ける、というケースは考えられない疎な交通の問題で、どのような情報であれば人々を動かすことができるか。 Laureen:「誰が同じ交通を利用するか」が役に立ちうる、交通をコミュニケーションの場として効用を向上できる。 加藤:協力をゲームの文脈で取り込むことが重要になる。住民の共同行動をどう促すことができるか。 ヨーロッパチーム 白井:'利己的な行動は社会的に望ましいプレイをもたらす'というポテンシャルゲームの状況を実現するための条件が、「通勤の自家用車から自転車あるいは公共交通への移行」の文脈でどう保証されうるかについて議論した。制度設計による等弾力性が要件で、実際にヨーロッパでは自転車通勤による所得税の減免措置や道路ネットワーク整備による利便性・安全性向上などの政策が推進されている。一方で、単純な移動のコスト関数による利得の定義では不十分とも考えられる。どのような社会的属性・条件によって人々をグループ化し、どのような要素を利得関数に入れ込むかが重要となる。特に居住地やアクセシビリティを十分に考慮しないと、公正性が損なわれる危険がある。 ローリーン:ポテンシャルゲームの要件についての考えは面白い。日本とヨーロッパにおいては、文化的背景の違いから政策の違いが出るケースも考えられる。 三上:日欧の交通政策の違いについて議論でき面白かった。インフラ整備についても、現状追認的な対策か、誘導型の投資か、違いが生じる。どちらの政策が望ましいかに関して、ポテンシャルゲームを使って考えられるのでは。 渋谷駅チーム 林:駅まちの混雑のためのポイント制御について考えた。駅を降りる人が多いので連続量で考えられ、今回の論文が想定するケースとなる。論文の適用可能性として、混雑課金をうまく設定する関数を考えられるのでは。特に、非現状満足条件を満たさない場合の議論がされているが、ポイント制度といった複雑な条件下では認知コストなどが障壁となりこの条件が満たされるない場合が大いに考えられる。自分が理論談話会で発表した均衡の論文では、効用最大化がプレイヤーのルールとして最初から仮定されていたので、それを緩和できるのが面白い。 佐野:誰しもが効用最大化に突き進むわけではないというのは現実社会でも考えられるので面白いと思った。 大山:非現状満足条件が満たされない、といのは、どちらかというと個人にとっては利得最大化になっているが情報の非対称性が存在したり、異質性が存在することによって生じると考えられる。そのため、サブグループをどう設定するかに依存するのでは。 羽藤:浪江については、プレイヤー間のゲームではなくネットワークデザインの問題を取り込んだポテンシャルゲームが考えられており面白かった。付知に関しては、スケジューリングコストを加味した予約の重ね合わせて公共交通のコストを下げる問題が研究されているが、プレイヤーをポテンシャルゲームに加えていく視点で考えられる。ヨーロッパの政策レベルの議論については、日本は島国であるがゆえにこうした議論はなされていない面があるが、通勤補助がいいのか、住宅手当なのか、その他のインセンティブなのかポテンシャルゲームで議論でき、トータルの仕組みづくりを変えられる可能性がある。渋谷駅の議論に関しては、みどりの窓口の縮小を停止するニュースがあったばかりだが、オーバーツーリズムの問題では観光客は混雑の繰り返しゲームの外にあり、課金による対策などをどう扱えるかが面白い問題である。 均衡配分の研究が膠着化していたところに、Sandholmによる新しい立式によってday-to-dayなどの制御の可能性が開かれた、まさに彼が人生を賭した素晴らしい研究であり、何度は高いが三上さんの丁寧な説明によって面白い議論が可能になってよかった。