20230410 議事録 中尾先生 羽藤 一般地主の土地売買を浮かび上がらせることは難しい? 中尾 農地の研究ではそのようなことをやることもある.例えば,フランスでは分散して土地を所有する傾向にある,というような傾向を掴むことができている. 長澤 インタビュー調査について.結論ありきで聞いてしまうことがある.どのようなことを意識すべきか 中尾 ここのインタビューは建物の履歴を知るための事実陳列的なインタビュー.きいてて想像することはあるが,それによって記憶が編集されることを心配している.聞くことをメインで行うイメージ. 羽藤 一個の古い建築に対して根掘り葉掘り聞くことは大切.道路などは複数の人から聞いていく話を重ね合わせて,地図からの推論の蓋然性を増していくことが大事.仮説を持つのではなく蓋然性ベースで. 中尾 インタビューしてて矛盾していることもあるが,あまり指摘しない.ただ聞く,という感じ. 松永 感想.レイヤー分析が歴史を考えるきっかけになった.あれは大きな分布を見るという感じだった.あれで都市の履歴が見れてよかったが,そのあと計画するときはミクロな視点に移り変わっていく.建築→都市というアプローチは逆方向で印象的.墨田区も歴史調査好きが印象的. 中尾 レイヤー分析は地図情報を優劣つけずに移していくという作業は結構いい.建築の人だと道路とかをあまり見ないこともある.全体を見ることは大切. 平松 地形図について.建物の属性ごとの立地の特性について教えてほしい.(神社仏閣は高いところ,みたいな) 中尾 日本だと自社仏閣は街の裏の高いところ,と決まっている.武士がそのようにゾーニングした.城下町ではとくに特徴的.また,時代によっても異なる.今の話はどちらかというと中世の話.荒地のような開発の難しいところを寺社で固める,ということもある(京都の鴨川や深川などでみられる). 羽藤 中世では神社の価値は軍の拠点であったり,土地開発の拠点であったり,現代の価値観と異なるところがある.政治的な意図を持って配置をされており,かなり複雑な論理が存在する.現代の配置の原理はちょっと軽い感じもするので,立地論を考える際は歴史を学ぶのはとても重要. 加藤 研究対象を選ぶときは,ある程度目的があって選ぶのか? 中尾 何を対象に選ぶかは関心・人に誘われるなど.行ってみてから考える・研究があるかみてから考えるといったことがある.関心も研究の過程で変わってくる.新たな論点・テーマが出てくることがある. 手代木 空間の復元について.わからない点を推定する,とはどのように行うのか? 中尾 住宅の場合,柱・梁の改修の後を参考にして考える.改修をする際にどのような作業があったのかを想像して,その際に残る痕跡を頼りに特定する.それでわからないことは基本的に主張できない. B4チーム 実社会にどのように役立つのか?しかし,都市は必要に応じて形成されている,という点では役に立つ,とも思うが… M1チーム 事前情報をもって現地に行くときとそうでない時でどのようにモノの見方が変わるのか,それを通じてどのように写真をとっていたか? M2博士チーム 他の分野との融合について.可視化は情報系の人との融合,部材の推定を考古学と共同してやることができる.港と駅というターミナルの研究をしているが,ロジから研究を一般化できるのではないか. 優勝はB4チーム!! 中尾 実社会にどう役立つかは大御所の歴史研究家も悩んでいる.現在のことばっか考える中で,過去のことも考えてみて,そこから将来を発想すると何か新しいアイデアが浮かんでくると思う.ただし,それは絶対ではない.外国との比較で出てくることもあると思う.現在の私たちの日常から離れていくことがちょっと重要. 羽藤 知らないことを知らないという状態では役に立つべきことが役に立たないということ,何が戦争のトリガーになっているか,疫病のトリガーになっているかがわからないままである.歴史という視座なくして社会基盤を論じることはできない.ヨーロッパとかは歴史無くして成立しない.