■離散連続モデルのレビュー(福山) 質疑議事録 近松: MDCEVだとシミュレーションができないという話を以前学生同士でしていた気がするが,シミュレーションはできるのか. 福山: Bhatもシミュレーションをするためのアルゴリズムを書いていたと思うので,できるはず. 三木: 複数財選択の場合と単一財選択の場合で,選択肢と予算制約の関係は違うと思う.どちらについてでも良いが,予算の設定等について深入りして検討されている研究はあるか. 福山: 時間配分モデルの場合,予算を1日とおいている場合が多い.1日といわれると反論は難しい.ただ,回遊行動の場合にそもそもどのくらいこの町を歩くつもりかというのをどう与えるかについてや,所得がある中で注目している選択行動にどのくらい予算を割いているのかについては,それほど検討されているものはないと思う.経済学とかの方にいけばあるのかもしれない. 大山: 予算が個人によって変わっても推定は可能なのか. 福山: 可能.個人ごとの効用最大化なので,個人ごとに予算が変わっても大丈夫. 近松: 離散連続モデルの分類はわかったが,今の最先端の潮流とかはあるのか. 福山: MDCEVは便利.たくさんある中でいくつか取ってやるとか,closed-formで計算できるとか便利なので,これが結構使われて来ているのではないか. でも,MDCEVだと表現できないものもあって,そういうのをやろうとすると誘導型が便利だったりするので,MDCEV後も誘導型が提案されたり,Bhat自身も誘導型を研究していたりする. 大山: 僕の印象では,誤差のところに関心のある統計の人たちは誘導型を作っている.ただ行動モデラーとしては,行動原理が誘導型だとよくわからないから,構造型の効用最大化に基づいてKKTで解けるところに萌えて,MDCEVなど解釈しやすいものに惹かれているのではないか. 庄司: 時間配分型のMDCEVだと時間割引率を考慮できないというのが自分の問題意識としてある. 時間割引率が効かないスパンだといいけども. たとえば避難行動とかだと,時間割引率が効いてくるのでMDCEVで表現できず,GRLのほうがよかったりすると思う. この離散連続モデルを1km四方のアクティビティ生成にどう使うのか. 羽藤: スタティックな記述に限られるね. 福山: Habibなら,逐次的な選択が考慮できるが,動学的な概念は入っていない. 羽藤: 動学的な概念はbehaviorモデルに残されている課題.離散選択モデルから離散連続モデルにいって,そこでChandraがやりきった感じになったけど全然やりきれていない.明らかに動学的な問題なのに,スケジュールが決まっているのか決めながらやるのかというところの記述には至っていない. ただ,スタティックなデータが1日分の時間配分データなどとしてあって,それを使って推定するのならば,行きついた感がある. 準動的な交通量配分は,スタティックの繰り返しでしかない. そうなると時間割引率みたいなのが動学的な問題では本質的で,選択肢同士の動的な相関などもあるだろうが現モデルには入っていない.差分方程式で表現するとかマルコフ過程で表現するとかあるけれど,行動モデルはまだ薄い.それは動学データ自体がまだ薄かったという背景もある.でもパネルデータが取れてくると,1週間単位のスケジューリングとか分解能の細かいものができてくる. 時間制約や制約関数の動学的な表現,制約条件そのものを確率的に表現するとかが課題なのではないか. 大山の経路配分モデルに離散連続を使うことはできるのか. 大山: 連続選択肢は時間になるのか空間になるのか・・・ 羽藤: タイムスケジューリングモデルだというと,離散連続のスケジューリングと大山の平面方向のスケジューリングがイコールになっていないといけないがどういう関係になるのか. 大山: 単位時間で区切っているので,速度の概念が入ってくるが・・・ 羽藤: モデルとモデルの等価性の問題になってくるね.これをぼんやり考えていると次のテーマに繋がっていくのでは. 平面の意思決定を積み重ねていくと連続的に繋がっていく. 空間の割引率と時間の割引率はひずみ方が違うから単純には考えられないけれど. 近松の問題だとどうなる? 近松: スケジューリングモデルで使うくらいかと思う.そこで庄司に質問. MDCEVだと時間割引率が考慮できていないというが,考慮できていないのかそもそもそういう概念が入っていないのかどっちなのか. 庄司: そもそも入っていないし,入れようとすると最適制御並みの難しい問題になるから無理かと思う. 近松: 離散連続モデルでも一応将来について時間を配分している.シミュレーションで時間の配分結果が出てくる.これは時間割引率0の配分なのか1の配分なのか. 福山: Habibの場合は,離散選択で選ばれた選択肢Jと残りの活動に時間を配分する.なので残りの方の効用に,割引の要素が入っていると思う. 大山: 残しておくことによる効用を定義しているから,時間割引率が0とか1とかそういう話じゃない. 近松: 時間割引率とHabibのモデルが統合できていないということか.これは組み合わせられるのか. 庄司: Habibの場合は分割してるから表現できているように見えるということ.でも動学化するなら,配分する時間に順番を入れないといけないし,その連続量を最適制御することになるので難しい. 近松: 将来的にはアクティビティモデルも動的計画法的な感じで作っていくことになるのか. 羽藤: Recker型がフルだろう.小規模なモデルならいいけども計算が持たないね. 大山はアクティビティモデル何でやるの? 大山: Reckerかな. 羽藤: でもそれは理論モデルだからだろう.パラメタリゼーションとかやると難しい.まああたらないだろう. アクティビティモデルの現状として,一応は記述できているというところまできていて,あとやろうとしても複雑化しているだけみたいな話になっている.ディープラーニングみたいなやりかたならできるんだけど,それはあまり意味のない当て方だから・・・ 横浜のフィールドワークにいくときに,学生がどういうすごし方をするのかみたいなのは離散連続でかけるのでは.シーケンスはHabibでかけるような気がする.来たあと次にどこで待つのかとか.ベースはこれで書いて,空間選択のほうは・・・まあ難しいかな. 課題はまだ多いね. 庄司の卒論は離散連続を扱ったけど,推定する上で何が一番難しかった? 庄司: 自動車挙動を離散連続モデルで表そうとして,角度を離散・速度を連続量にした.そこから,ドライバーの読み合いを書こうとしたが,何を使ったら自動車の相互作用挙動を表せるのかわからず,さらに,相互作用も通常の夫婦間相互作用などの対称性がなく,非対称になるのでよくわからない.対称な相互作用のモデルの推定に使われるNLPで解いてみても,その解がいったい何なのか解釈ができず,さらに解もあまり求まらずで苦労した. それに,単純な車線変更する/しないの話ではなく,かなり細かいレベルを扱ったため,それぞれがいったいどんな意思決定を表しているのか書きづらかった. 羽藤: それは問題の繰り込み方がわからないということ.深層学習とかならできるのではないか. 観測は細かいけれど人はそのレベルで意思決定をしているわけではない.意図というものがあるから.そしてそれは観測よりも少し広い範囲に現れる.そういうことをちゃんと扱ったものはまだないので,面白いだろう.