Geroliminis, N., Daganzo, C.F., Existence of urban-scale macroscopic fundamental diagrams: Some experimental findings, Transportation Research Part B, Vol.42, pp.759-770, 2008. ■背景 ミクロな交通量はこれまでQV曲線やBPR曲線で把握されてきた。マクロな交通流はよくわかっていない、この関係を関数でどう表すか。 ■ミクロな速度・密度・交通量の関係 密度は高すぎても低すぎても交通量は少なくなる。QV曲線でこの関係は表されていて、自由流と渋滞流の2つの領域に分かれる。 BPR型リンクパフォーマンス関数では旅行時間を交通量の関数として表すことができる。 ■既往研究 ・都市面積や道路幅から交通量表現 ・密度から平均速度・交通量表現(Herman, Prigogine, Ardekaniなど) ・MFD(Microscopic Fundamental Diagram, ゾーンごとの平均交通量を検知器のデータから把握)を詳しく説明したのが本論文、 一様な密度を持つ”neightborhoods”を定義して境界線でゾーンを切り取り、観測データのみからエリア内の大まかな平均交通量・速度・出入り交通量の関係がわかる →既往研究との違いは? エリアをしっかり定義したこと。隣接ゾーンの変化の関連性が離散的につながりを記述している。イベント時・避難時のふるまいなどは記述できるだろう。 →一様な密度とは? 交通量の密度kのこと →neighborhoodのスケールイメージは? 小学校区くらい?スケールの定義や取り方を考えた方が良い。 ■データ概要 横浜10km2の範囲の2001年のデータ、検知器500個で5分ごと台数と占有率を取得、 タクシー140台分のトリップデータ(パーキングブレーキ,ウインカー,ハザードランプの状況も)で乗客を乗せている時のデータを取る q(交通量)-o(占有率)の関係を見ると、ばらつきが大きく明確な関係はよくわからない、車線による影響があると考えられる 平均交通量と平均占有率の時間変化を見ると、qとoの時間差は大きく関連性がみられない、ラッシュアワー時の交通量ばらつきの影響があると考えられる ■MFDの存在(MFDが適用できるか) 車両密度・車両長さ・平均速度を定義、明確な関係性がある、どの時間帯でもMFDの存在が認められる →なぜ明確な関係が表れたのか? 平均をとって標準化したから。全体での5分ごとの平均をプロットしている 検知器は車線ごとについている、車線の長さでの重み付き平均を考える 重み付き平均を考慮したkとqの関係を考慮しない場合と比較 密度では重みを考えなくても、重みを考えた交通量が出そうである ■境界条件 エリア内重み付き平均交通量(qw)をエリア外に出る交通量(D')で除するとほぼ一定値をとる エリア外に出る交通量を計測できれば平均交通量が予測できる ■プローブデータの利用 タクシーと検知器の出入り台数の割合を比較、日中はほぼ一致で検知器と同様に考えられる、夜間はサンプル数が少ないためかズレが大きくなる →これまでになかったアプローチで面白い プローブデータから、一定時間内で考えれば、エリア内総移動距離・総移動時間・平均プローブタクシー速度・ 一定時間あたりタクシー台数・境界上タクシー台数・検知器有りの境界上のタクシー台数・エリア内トリップを終えたタクシー台数がわかる 検知器からは、検知器有りの境界上の車両台数が既知 →単位面積あたりやエリア内での指標は研究室ではあまりやってこなかった、今回はゾーンは1つだがゾーン間でどの向きを向いているかなどもわかる ■速度と密度の近似(タクシーの場合を全車両に拡大) 速度の近似:平均速度の推定値は同じとみなす 存在車両台数(密度の代わり)の近似:全体台数と検知機通過の割合(70%)で比率を近似 p(拡大係数)も近似的に求められる v-nの関係性がみられる、車両発生がポアソン分布に従うとして分析しても誤差ではないと結論づけられる ■平均トリップ長算出 エリア内トリップ数(D)も拡大係数で近似できる p^とD^が完全に比例関係になっている、MFDを一般的に存在するといえる ■まとめ 需要や過去の状況にかかわらず独立にMFDは存在する ■質疑・コメント この論文のミソは? 境界条件から中の量がわかるところ、空間設計やサービス設計に生かせる変数を考える集計の仕方がわかりやすい ただ感覚的に本当にそうなるのかどうか疑問のある部分がある、ゾーンの大きさの設定が重要になるだろう 集計して全体に戻すという考え方は大事 なぜ5分刻み? 検知器のもともとの設定が5分、信号のサイクルの影響を受けなくなる、5分という短い間隔でもできるということが言いたかったのではないか 交通管制としてもスケール感として丁度良いのだろう エリアサイズの大きさや時間間隔の取り方でどう変わっていくかを見ていくこともできるだろう 普遍性のある関係性や関係式に執着してみる視点も大事 ---------------------------------------- ■全体のまとめ ミクロな交通流の記述は既存のQV曲線やBPR関数で可能であったが、マクロな交通流を記述する方法として本論文ではMFD(Microscopic Fundamental Diagram)の概念が提案されている。主要道路での検知器データとタクシーによるプローブデータにより得られた密度・交通量・占有率のデータから、密度と交通量の関係、エリア境界を通過する交通量とエリア内交通量の関係を明らかにし、MFDが検知器データとプローブデータのいずれのデータからもどの時間帯・エリアにおいても説明できることを示した。大胆な手法によって一様密度を仮定したエリア単位でのマクロな交通が説明でき、政策で変化する交通量や速度を予測することでアクセシビリティ向上に役立てられることが期待される。 ----------------------------------------