Yang,H.,Wong,S.C.,A network model of urban taxi services,Transportation Research PartB,vol.32,pp.235-246,1998. ●背景 タクシーの規制に関して,料金と参入の大きく2つのトピックがある. 従来は集計的な需要供給モデルだったが,タクシーには空間的条件が存在するため,古典的な経済の枠組みより複雑である. ●概要 OD需要とタクシー台数が与えられたときに,均衡解に基づいて配分計算を行い,設定した指標に基づいてシステム効率性を計算する. ●モデル ・仮定 -時間内あたりタクシー需要は固定 -客を乗せたら最短経路まで移動,下ろしたらそのゾーンに留まるか移動するかで客の探索コストを最小化する ・定式化 -ゾーンjで客を運び終えたドライバーがiで次の客と出会う確率待ち時間,ゾーン移動時間の合計に不確実性θを掛けてeの乗数としてロジット形式で定式化する. -到着台数×出会い確率=次の出発台数,出会い確率の式中の待ち時間だけが内生的なのでそれを求める. ※最小タクシー台数 ・タクシー台数が増えると利用可能性が上がるが効率が下がる ・定常均衡状態が存在するための最小台数を求める ・台数Nを最小化する→場に存在する台数の計算式中の内生変数待ち時間を最小化する. →全体のトリップが分かってて,待ち時間を0にするための最小タクシー台数を 考えるという目的 ・均衡条件式とタクシーの行動モデル(空タクシーの移動)を組み合わせて目的地iについての期待待ち時間を計算する.初期待ち時間を与え,繰り返し計算で繰り返し終了条件を満たすまで計算する. ●評価 ・システム性能評価指標3種類 -空車タクシーの間隔 -タクシーの待ち時間 -全サービス時間におけるタクシー利用時間 ・数値計算例 -中央管制システムが制御するとき(システム最適) -利用者最適で情報が完全にある時 -利用者最適で情報が無い時 ・不確実性θが高いとは,利用者がより正しい最短経路を利用できるということ. ・空車タクシーの間隔は,タクシー台数にあまり関係なく一定で,θが上がるにつれて上がる,つまり情報を与える量により変わる. ・タクシーの総待ち時間は不確実性に関わらず一定,θがあがると待ち時間は上がり旅行時間は下がる. ・タクシー利用率は不確実性には無関係だが台数に依存して変化する. ●結論 OD需要が固定の場合のタクシーオペレーションのネットワークモデルを示した. 需要固定の下ではタクシーの台数と情報の利用可能性が重要な政策変数となる. ●議論 ・サービス時間は考慮されていないのか? →サービス時間(需要)は固定と仮定している。 ・オペレーションサイドがもっている情報は? →θ(タクシー運転手から見た客がどこにどれだけいるかに関する不確実性)で表現する。情報は誰がどの程度持っていることが効率的なのかを考える。空間設計に生かす。 ・高齢者のケア、ケアセンターまで行った方がいいのか、それとも車が各家庭に行くのがいいのか?こういう定式化できればいいのではないか。 ・福山さんの場合はリンク内の歩行者数などを変数に入れて既存のリンクを改良するか新しいリンクを作るかという問題にも援用できると思う. ・需要と供給と言うとわかりにくいが,これは関係性のモデリングである.供給者側の最適化問題として駐車場にも適用できるし,マイクロシミュレーションの前段階の行動特性把握としても使える. ●要約 タクシーの規制に関して,「料金」「参入」という二つのトピックがある.従来は集計的な需要・供給モデルの枠組みで検討されてきたが,実際は空間的条件が存在するため複雑な問題である.本論文ではゾーン単位の仮想空間を設定し,その中でのOD需要とタクシー台数が与えられたときに,均衡解に基づいて配分計算を行い,設定した指標に基づいてシステム効率性を評価することを目的としている.まず総乗車時間と総空車時間の和から総サービス時間を求め,タクシードライバーが客を運び終えた後に新たに客と出会う確率をサービスレベルから導出する.これらの式から定常均衡解を求め,考案した解法アルゴリズムに従って計算を行う.システムの効率性については,空車タクシーの間隔,平均タクシー待ち時間,平均タクシー利用率という3種類の指標を考案し様々な条件下で比較した.結論としては,固定需要下ではタクシーの台数と情報の利用可能性が2つの重要な政策変数となることが示された.