佐佐木綱, 吸収マルコフ過程による交通量配分理論, 土木学会論文集,No.121, pp.28-32, 1965. 概念: 街路交通を抽象化してみると,それぞれの車両は各交差点で確率的に方向を変えていると考えることができる.発生源と吸収源を考慮した吸収マルコフ配分と考えることができる. 仮定と定義: ・各車とも同一方向で交差点に進入する場合、直進率・右左折率は同じ ・各交差点間にそれぞれ1つの発生源・吸収源を持つ 発生源:交通量の発生するところ(トリップ開始地点) 吸収源:交通量の吸収するところ(トリップ終了地点) 発生交通量:単位時間に各発生源から発生する車の数 吸収交通量:単位時間に各発生源が吸収する車の数 遷移確率: シャノン線図によって遷移確率を与える. 遷移確率行列を標準系で配置. 吸収的状態と非吸収的状態(発生) 遷移確率行列に発生交通量をかけると通過交通量がわかる リンクごとに発生.吸収源を設定 交通流の満たす条件: (1) 各ゾーンの発生・吸収交通量は等しい (2) 各発生源から任意の吸収源までの交通量がOD交通量を満足している (3) 各車はトリップが終了したゾーンで、次の発生交通量となる →Nトリップ目の発生交通量はN-1トリップ目の吸収交通量と等しい (羽藤) 立ち寄るみたいな確率がリンク内に吸収される確率と考えることができる. 遷移確率はどこからきてるのか,データオリエンテッドにやるのか,空間配置条件から決めるのか(ここでは需要モデルはいれてない) 需要モデルを入れると,吸収確率が高くなるとか低くなるとか変動する.数字の根拠を通常は行動モデルで行っている.どのように与えるのか 過渡状態の定義は?発生源でも吸収源でもない,ノードにいる状態. ステップ数=通過したノードの数 制約条件をかぶせないと期待推移確率は減らない. →解決法 各ODごとにマルコフ連鎖を考える(遷移確率を与える) 歩行者の場合はサイクリックで出てきても問題ない. 伊藤君の研究における課題: リンクとノードをどう定義するのか? ・発生ノードと吸収ノードは歩行者の場合いらない?リンクで全部表現する. ・推移確率はどう求めたらいい?具体的なデータがあれば出るのでは. ・歩行者に対してしつらえを変えるというのは,遷移確率に影響を与える. ・セグメンテーションを複数枚重ねてみるとか. ・赤松論文を読んだ方がいい. ・ネットワークをこうすると全体としてよくなる.歩行者(回遊)の場合は指標がよくわからない.やったらこうなるというのはわかるが,デザインとしてどうしたらいいかという話.歩行時間最大化? ・エントリノードに近いところの推移確率,遠いところの推移確率をどう操作するのか. ・配分結果を階層的に評価するとかもある(高齢者と若者とか) ・リンク確率を個別確率として出せるわけではない.観測の精度,データの密度を考えた集計の単位を考える必要がある.リンクことではなくブロックとか. ・行列をどう整えようとしていて,その要因は何かということと,隣り合った領域でどうか ・大規模ネットワークでの計算コストは? ・ネットワークを全部等価として扱うか,ラフな部分を作って境界条件で受け渡すなど(ゾーン内,ゾーン間など)の計算など.逆行列は厄介.ロジックがあれば重要な知見.ゾーンの中に入ったのを仕分けるような方法の方がいい? ・リンクに与えた場合とノードに与えた場合でどう違うのか. →通過ととどまるを仕分けしている ・人とのつながりをリンクとして設定することもできる.集落の関係性なども同じアプローチで評価できる. ================================================ まとめ: マルコフ配分とは,ネットワーク上における意思決定主体(車両など)の動きを各交差点での推移確率(方向転換の確率)を用いて逐次的に交差点を推移する過程としてモデル化したものである.モデル化の仮定としては,1)各車とも同一方向で交差点に進入する場合、直進率・右左折率は同じ,2)各交差点間にそれぞれ1つの発生源・吸収源を持つとしている.ここで,発生源とは交通量の発生するところ(トリップ開始地点)を示し,吸収源とは交通量の吸収するところ(トリップ終了地点)を表す.ここで,交通条件が満たすべき条件として,1)各ゾーンの発生・吸収交通量は等しい,2)各発生源から任意の吸収源までの交通量がOD交通量を満足している,3)各車はトリップが終了したゾーンで、次の発生交通量となる,を置くことで,これを満たすような遷移確率を求める.モデルの問題点としてはサイクリックな経路が生成されてしまうことがあげられるが,この問題については赤松らの研究によって複素数空間を導入することで対応されている.