■5章 不完全競争 ・現実社会では個別企業の行動が市場価格に無視できない影響を与える(価格支配力がある) ・売り手が1つのとき→独占市場 ・売り手が複数企業の場合→寡占市場←ゲーム理論を用いた分析 ●価格支配力の源泉 ・マーケットシェア:これが大きいと価格支配力が生まれる ・製品差別化:同じ財でも品質が異なる→そばとしては同じだが,質の高いそばは価格が高くても需要は高いことが起こる ●独占市場 ・独占企業の収入=価格×生産量 ・限界収入(生産量を限界的に増加させた場合の収入の増分)は収入の微分値であり,これは市場価格より小さい ・収益:収入−費用 ・完全競争における均衡点よりも独占市場における均衡点は社会的に悪い→価格 が高く供給も少ない=厚生損失 ・規模の経済の存在=生産費用が下がり,財の価値が上昇=技術効率性の増大 ・様々な規制:限界費用料金規制(グラフ中の点A,企業の損失補填の必要性),平均費用料金規制(グラフ中の点B,赤字を出さない),インセンティブ規制と規制緩和などなど ●寡占市場 ・少数の企業が戦略的な相互依存関係にある ●クールノーゲーム(生産量について,同時に意思決定を行う) ・互いの利潤が相手の生産量に依存する→戦略型ゲーム→ナッシュ均衡 ・相手の生産量を所与として,自分の利潤を最大化する最適反応関数を設定 ・全ての企業について最適反応関数を連立方程式として解く. ・市場需要が生産量に依存しない場合の供給量(完全競争均衡)>寡占時の生産量>独占時の生産量(収益は逆の関係になる) ・クールノー極限定理:企業数を無限大に近づけると,寡占市場の供給量は完全競争均衡における市場供給量に収束する=企業の数が多いほど一社あたりが市場に与える影響が小さくなる. ・カルテル(お互い少しずつ生産量を減らすことで,市場にとっては悪いが企業として利益を上げよう)と独占禁止政策(それの対抗策,課徴金減免制度など) ●シュタッケルベルグゲーム(生産量について,順序を考えて意思決定を行う) ・部分ゲーム完全均衡 ・互いの生産量を意識→Bの生産量はAの関数→Aの生産量をAの関数だけで表せる ・逐次手番ゲームとなり,両者の均衡生産量が異なる ・市場供給量:独占<クールノー<シュタッケルベルグ<完全競争 ・企業の利潤:独占>シュタッケルベルグ(先導)>クールノー>シュタッケルベルグ(追従)>完全競争 ・追従者が参入するか否かも考慮する場合:先導者が大量生産に拠る価格引き下げで追従者の生産停止させることを参入阻止という ・追従者は固定費用を持つ(そのため,上記の場合自分が最適生産しても利潤が負になる可能性がある) ・先導者は独占ができるギリギリまで生産量を増やし,独占を行う. ●ベルトランゲーム(価格について,同時に意思決定を行う) ・クールノーゲームの生産量を価格にしただけでほぼ同じ.他者の価格があがると自社の需要が下がるため,互いに上げていくというような関係性 ・二者の関係の違い -生産量を戦略とする場合→戦略的代替の関係,相手が上げるとこっちは下げる -価格を戦略とする場合→戦略的補完の関係,相手が上げるとこっちも上げる ●議論 ・ゲーム理論に拠るアウトプットについて,完全競争が市場的には理想と考え,様々な状態を仮定して制度設計などでそれに近づけていくというものであってるか? →パレート効率的(完全競争)に持っていくのは難しいのでせめて少しでもその方向に改善して行きましょうという話.実際に市場がどういう状態なのかは不明. ・参入阻止の話は東電の話である.参入の固定費が高いので誰も参入しないが,それを政府が下げることで参入が起こり,電気の値段が下がる →NTTの携帯規制緩和も同じ.携帯と固定電話をセットで安くしてはダメですよとかいう規制などがあった.郵政民営化もそのパターンである.ただし規制の結果をどのように評価するかが難しい. ・ベルトランゲームも企業数が増えたら完全均衡に近づくのか?価格が高くなると生産量も変化するのか? →売れる分も考えて利潤を最適化しているが,需要という数の話は入ってないため詳細についてはわからないが恐らくそうなる. ・自分たちが価格を下げるというインセンティブはどこで働くのか, →家電量販店の価格引き下げ競争のような形で,目先の利益を考慮して価格が下がり均衡する.自分が下げることの影響と相手が下げることの影響は別のパラメータを用いて差別化してある. ・現実的には上記のパラメータが異なるのでは. →その通りであり,簡単のため当該パラメータを共通としているが,パラメータ変えても均衡点が変わるだけで,自分の利潤は自分のパラメータ依存となっているので変わらないと考えられる.