第5章 自由貿易協定ネットワークゲーム ●ネットワークゲーム ・ネットワーク安定性 どのプレイヤーも既存のリンクを一方的に切るインセンティブを持たない,かつリンクを張っていないペアについては,少なくとも一方がリンクを張るインセンティブを持たない ・自由貿易協定(FTA)のネットワークゲーム リンクコストを関税として,どのようなFTAネットワークが安定的なのかを調べる. ●安定的FTAネットワーク ・貿易モデル 産業化度:消費者一人にどれくらい産業があるか 測度:全国家に占めるi国の消費者,労働者などの割合 貿易に拠る粗効用,輸出額,輸入額のを企業数,消費者数の関数として表す 利得関数がゼロ以上ならFTAが結ばれる.定式化の結果,これはFTAネットワークに依存せず,両国の産業化度の比がどの範囲にあるかによって与えられる. ・産業化度と関税が等価であるという意味で全ての国が対照的な場合 FTAネットワークが完備グラフとなるグローバルな自由貿易が唯一のペア安定的ネットワーク ・国が非対称的な場合 産業化度の近い,先進国同士,後進国同士,そして中進国でFTAが結ばれている.先進国と後進国の間でどのようにFTAが結ばれるかは,国家間トランスファーによって与えられる. ●国家間トランスファー ・二国間で産業化度が大きく違う時,FTAは先進国しか望まない.そのため先進国から後進国へ利得の移転が行われ,それによりFTAで両者に得があるように持っていく. ●質疑 ・tは関税の額だが,財は単一(関税は一律)なのか? →財はバラエティの代替性がゼロである場合(=財の価値が一律な場合)をこの場合は考えている ・粗効用とは何か? →関税の関数で,関税が高い商品は価格が高くなり消費者にとって損であることと,貿易により商品が入手できることの得の合成効用というイメージ ・安定的FTAネットワークの2国が非対称な場合の式(1)の意味は? →産業化度の比がある条件内にあれば,2国はFTAを結ぼうとすることを表す.産業化度は定数である. ・トランスファーがよくわからない 先進国はFTAの利潤が大→後進国は利潤が少→FTAが締結されない→後進国へ先進国の財移転(トランスファー).これが実施された時のペア安定性を調べることを行なっている.FTA締結国間のトランスファーが可能な場合は,FTAネットワークが完備グラフとなるグローバルな自由貿易が唯一のペア安定的ネットワークとなる. ・ゲーム理論的なポイントは? →ネットワークゲームであるということがゲーム理論そのものなのかもしれないが,よくわからない ・ネットワークが安定というのは,任意の2カ国間で部分ゲーム完全均衡になるということか. →ネットワークゲームを用いた貿易モデルである,ペア安定的という概念がネットワークゲームの解であり,それを用いて貿易を解いている. ・国の行う作業は何なのか? →関税を決める(関税が0の時はFTAを結んでいることになる).その結果輸出輸入額が決まる.また,トランスファーの額も決める.