第19回 社会基盤と建築における都市形成史研究の可能性を考える
2015年1月31日(土)14:00-17:00開催
東京大学工学部1号館4階,復興デザイン研究体スタジオ
14:00-15:00:山口 敬太(京都大学助教)
水路とその利用システムから読む都市の空間組織
議事録
近代以前の琵琶湖や内湖沿岸の水郷集落では,集落内に張り巡らされた水路が,田舟による荷物の運搬,生活用水,農業用水等に用いられ,長きにわたり生業の風景を形成してきた。本発表では,こうした水郷の面影を残す数少ない集落の一つである伊庭(滋賀県東近江市)をとりあげ,明治・大正期以降の水路・農地・建築などの都市空間の復元とその後の変遷の把握,住民による水利用の実態の把握を通じて,空間組織を解読するアプローチを紹介する。ほかの地域の事例もまじえて,空間調査のアプローチ,調査に基づいた空間の価値づけのあり方,景観計画の考え方について議論したい。
15:15-16:15:中村 優子(ウィスコンシン大学) × 山口 敬太(京都大学助教)
ヴァナキュラー建築の研究手法とその展開 -都市の中の建築史-
議事録
富山地方の枠の内と呼ばれる軸組構造は、三間四方の枠内を基本として、民家に棲む人々のライフサイクルステージや生業の変化に呼応し、民家の間取りを展開させるが、軸組はその発展の秩序を与えているといっていい。都市の中の建築価値を再編集しようとすれば、様々な史料からその土地の建築の履歴を読み解き、今日的な価値を付与し、発展的に展開していく必要があるだろう。本発表では、北米の建築のリノベーションによるプレイスメイキングの現地調査を下敷きに、地図、図面、オーラルヒストリーといった多様な史料の収集からその分析手法までを概説し、バナキュラー建築の学術的な研究手法の可能性を議論したい。
16:30-17:00:羽藤 英二(東大) × 山口 敬太(京都大) × 中村 優子(ウィスコンシン大)
集中討議:社会基盤と建築における都市形成史の可能性を考える
都市形成史を下敷きにした都市価値の再編集に向けて,都市の動的空間像についてそのよりよい理解が求められている.しかしそのためには,たとえくずのようみ見える史料であっても、一点、一点を大切につなぎ合わせる行為によってのみ、過去と現在をつなぐ像となって浮かび上がるのではないか.京都大学の山口敬太氏とウィスコンシン大学の中村優子氏の歴史研究の成果をもとに,土木史研究とヴァナキュラー建築学の研究手法の可能性とアーバンデザインへの展開に向けた課題について議論したい.